緑青

燃えよドラゴン ディレクターズ・カット版の緑青のレビュー・感想・評価

4.0
初めてブルース・リー作品を観た。ビリビリ来た。鮮烈とはこのことか。本当にすごい。これが香港アクションの金字塔だと痛感させられた。考えるな、感じろ。

アクションするブルース・リーが兎角美しすぎる。魂から発されるエナジーが、ゆらゆらと湯気になって見えるようだった。彼を画面の中心に置いて、フレームの端から敵が入ってきて、それを精確に、熱烈に一撃ずつ倒していく。敵側にカットバックすることもないので、観ている側はブルース・リーの視線だけで敵がいることを察するしかないし、状況の予測がつかず、息を詰めてみてしまう。真剣そのもののアクション。だんだん身体が熱くなってきて見惚れた。心底かっこよいと思った。

最初、「まじか?」みたいな情報をバンバン出されるが、「なるほどつまりは『ハン絶対許さん』てことだな」と飲み込んで、いろんな人の回想シーンが続いた時点で「これから天下一武道会があるってことか?みんな思惑があるんだな!その裏でそれを探るのか!」と思いきや、思ったような展開にはならず…!と、常に予想を裏切られ続けて本当に面白かった。
途中でウォーターベッドが出てきて「あれっこれってX-MENフューチャー・パストの『パスト』と同じ頃か?」と思ったらドンピシャで公開年が73年だった。『裏切りのサーカス』の舞台と同じ頃でもあって、なるほどスパイもの的な雰囲気がリアリティを持って演出できたのかなと思ったりした。麻薬中毒にされた女の人たちは助けられたのかなとか、ローパーさん(観てるとちょっと好きになるくらい良キャラ)はそのあと大丈夫だったのかなとか、たぶん脚本上あらゆる細かい点についてもっと語りたいことがあったと思うのだけれど、「悪い奴がねじ伏せられて死ぬ」という最大の目的が見事な形で達成されることで見終わった後に十分に強い満足感がある。意外な伏線回収もあったし。びっくりした。快哉をあげてしまった。

この映画が世に出て半世紀が経ち、ブルース・リーの死からも同じだけ経つわけだが、全く色褪せない作品だった。あまりにも彼の生命力の発露が鮮烈すぎて、若くして亡くなったと聞いてちょっと納得してしまった。彼のアクションは最高のクオリティのところで永遠化され、香港アクションをつくる全員の前に眩く輝き続けてきたのだとしみじみ思った。
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