犬のかたち

14歳の栞の犬のかたちのレビュー・感想・評価

14歳の栞(2021年製作の映画)
5.0
なんで、なんでこんなに愛おしくて切ない気持ちになるんだろう。
たしかに14歳の頃に私もクラスという箱の中にいて、この雰囲気を景色を痛いほど知っていて、決して居心地が良い訳でも楽しかった訳でもないことも知っていて、なのに脆くて痛々しいあの頃を全力で抱きしめたくなったし14歳の自分を少し羨ましく思ってしまった。
戻りたくもなければ戻れもしないのに。

絶対分かり合えないと思っていたあの子やクラスの中心にいたあいつ。
話すことも関わることも無かったクラスメイトがどんな風にあの教室を見つめていたか、何を思っていたか少し知れた気がした。
クラスの中の関わりが薄そうな子達がそれぞれ別のインタビューで似たような答えを出しているのを見て、些細なきっかけ1つでボタンを掛け違っていたのならあの子と私は良き理解者になれていたのかな、とか、あの時もっと話せてたらあの子の面白いところ知れたのかな、とか、画面の中の彼らと自分の中学時代を重ね合わせて過去に思いを馳せていた。
彼らの人生と私の人生が今後交錯することは無くとも、同じ青春を少し味わえたのが嬉しい。

14歳って環境や才能っていう努力じゃ賄いきれない理想と現実のギャップに気づいて躓きそうになるタイミングだよな〜って夢を語る彼らを見て思った。
14歳、大人からしたらまだまだ未熟で不完成な子どもだけど14歳からしたら自分たちはまだ大人では無いけどもう子どもでは無い、はっきりカテゴライズされない年齢だと確かにそう思っていた。
大人じゃない、けどもう子どもでも無いのは自覚しているから、経験が薄いなりに悩んで悩んで劣等感や焦燥感、優劣感、漠然とした不安、希望、それらの感情を上手くコントロールしようとする。
結果的にそれは黒歴史と呼ばれるものになったり上手くはいかないけど、どうせこの先もずっとそう。
彼らの眩しさも刺々しさも優しさもどこか身に覚えがあった。
年を重ねて自分の感情をごまかすことはそれなりに上手くなるだろうけど、自分の感情への向き合い方が下手なのは多分、全員ずっと下手なまま。
だからこそこの時期の不器用さ全開の感情の吐露が眩しくて尊い。

所属している部活が同じだったり似たような感性を持つ子に自然に共感して涙をぽろぽろ流しっぱなしだった。

小学校の頃仲良かった子との嫌な関係性の変化とか恋とか、14歳の頃は何も分かんないなりに色々手探りで知ったな。
その後も高校辞めたり何なり色んな出来事があるけど、人生で1番辛くて濃くて淡かった時間は中学時代だなと17歳の今思います。
今の感情には一旦ここで栞を挟んでおくから。

思い出した時に、またいつかの春に見れますように。
そしてその時が来たのなら私はどの感情に栞を挟むのかとても楽しみにしています。




この儚くて脆くてきらきらした、本当に奇跡的なバランスで成り立っているこの作品を、青春をありがとう。