イチロヲ

Edmond(原題)のイチロヲのレビュー・感想・評価

Edmond(原題)(2005年製作の映画)
5.0
生き甲斐を喪失させている中年男が、自分の居場所を追求するべく深夜のニューヨークを彷徨い歩く。人間社会の混沌と不条理を実感する男のジタバタ劇を描いている、サイコ・サスペンス。同名の戯曲を原作に取っている。

妻に向かって「おまえに性的魅力を感じなくなったから別れるわ」と無表情で訴える場面から始まる物語。前半部は、消費社会への憤りを描いていく展開。後半部は、レイシスト&ルサンチマンに変身した主人公が、暴走状態に入る展開。

若いエネルギーが枯渇した状態にある主人公が、女性の性的魅力を再充填させようと試みるシークエンスが面白い。日本とは異なる性産業を垣間見ることができるし、行く先々で支払いを求められて、いちいちブチ切れる主人公にも笑わせられる。

終局に入ると、暴走の果てにナンダカンダあって刑務所へと到達。社会の最底辺部とされる場所で、本物の哲学者に変身するところが、これまた笑える。まるで「哲学すること自体が喜劇である」とでも言わんばかりの、痛快極まる逸品。
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