つるつるの壺

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のつるつるの壺のネタバレレビュー・内容・結末

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

戦時下において玉砕、特攻などという人を消耗品のように扱う価値観が戦後も企業戦士という形で今なお続いているヘルジャパン。水木というキャラは消耗品として使われる側から使う側へ回ることを強く願っている。権力者の面子と責任回避の駒として二度の玉砕を命じられた彼の言う「生き残る」とは生に対する決定権を自身のものにするということだ。

そんな水木は龍賀一族に取り入り、そこで一族の真相を知ることで搾取する側のあまりにも醜悪な行いを目にする。それは家父長制を維持する為に近親相姦によって女性や子供を徹底的に搾取し、未来永劫そのサイクルを絶やさないよう村という聖域に閉じ込めることである。そこでは女性や子供は家父長制を増幅させる装置でしかなく、それ以外の人生は認められない。

それもこれも国家繁栄のため、敗戦のリベンジマッチである経済戦争には勝たねばならぬということだ。後に高度経済成長期という人々が猛烈に働いた結果の繁栄がある訳だが、そこで搾取され死んでいった人々に思いを馳せることなどあっただろうか?あの地下空洞にあった赤い桜は日本そのものだろう。生き血を吸って妖しく輝くその姿は決して綺麗なだけのものではない。