もぎ

笑いのカイブツのもぎのレビュー・感想・評価

笑いのカイブツ(2023年製作の映画)
1.6
事前情報なしで新宿テアトルで鑑賞。相当な客入りだったので、オードリーファンやラジオファンが多いのかな?と思ったが、よく見ると還暦くらいの男性客が多く、客層は結構謎だった。

原作ファンやオードリーのラジオを聴いている人は別の感想を持つのかもしれないが、自分にはこの映画で描かれるツチヤタカユキは「カイブツ」と言えるような人物とは思えなかった。

ストイックと言えば聞こえは良いが、ただの視野狭窄にしか見えない。

序盤は楽しく見ていたのだが、ツチヤタカユキが年をとっていってもまるで成長せず、子供っぽさに起因するトラブルをおこし続けて周囲に迷惑をかけるだけなので、主人公に魅力を感じるタイミングがなかった。

主人公の愚かさや直向きさは強調されるのだけど、反省も成長もなく年を重ねていくだけなので、「カイブツ」というより、ただのダメな人じゃん…としか思えない。

「おもしろ」にストイックな人物として描くのならば、大喜利とハガキ職人にのみ執着する理由も見えてこないと人物像が見えてこない。「おもしろ」さって、色々あると思うのだけど、なんで大喜利とハガキ職人にしか興味ないの?という疑問は最後まで解消されない。

パラノイア的な主人公の言動は、夢追い人としては陳腐かつ古色蒼然としている。その古さや視野の狭さを深掘る描写は少なく、「直向きにがんばるピュアな若者!」という様なイメージで進む。「人間関係不得意」なだけで、それに対して自己嫌悪に陥るだけで、そのことに向き合おうとする姿勢はまるで感じられない。

別に主人公に才能があることを観客に感じさせる描写もなく、何故か主人公が勝手に評価されたりされなかったりするだけだ。一応、主人公の作った大喜利やネタは出てくるけど、極めて無難なギャグしかない。それは映画だから仕方ない部分もあるけれど、「尖りすぎて浮いているお笑い狂」として描くなら、せめてちょっと尖った大喜利とか出したり出来なかったのだろうか?

主人公の「尖り」って、「お客さんのニーズが分かってないから会議で陳腐なダメ出しをして怒られる」みたいな感じなので、クリエイティブな業界には吐いて捨てるほどいる様な、「視野の狭さ故に低レベルなこといって浮く奴」の延長線上でしかない。せめて、センス自体が尖っていて才能を宿していることを示してくれる描写は欲しい…

cakesの人気連載が原作というのも、テアトルで上映してるのも「イカニモ」という感じ。岡山天音はじめ、俳優さんたちの演技は凄くよかった!
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