となりのとっくさん

オッペンハイマーのとなりのとっくさんのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

事前にたてはまさんの動画で量子力学について多少なりとも理解が出来ていたのと、早めに劇場に行ってパンフを買い読み込んだので大変観やすかった!
しかし登場人物多くて途中で名前だけ出てきても誰のことだったか見失ったりもあり。まぁ、そもそもノーラン作品を一回で理解しようとしてないしな。
色々な方の解説を見て、もう一回観に行こう。

「TENET」のようなエンタメ感は全くなく、「メメント」の様に徐々に全貌が明らかになるカタルシスがある訳でもない。
ただひたすら、オッペンハイマーその人の罪悪感を追体験する映画だった。
中盤までずっと会話劇の上、難しい話が故に字幕を追うのに必死だったけど、何故か退屈では無い。(不思議…)
そしてついに例の実験トリニティ。
観せ方が音楽も相まって素晴らしかった。
(ノーラン×ルドウィグのコンビは最強だと思う。)
まるで皆既日食でも見に行くようなウキウキの人たち。いよいよ加速していく原爆完成までのカウントダウン。
実験成功後の立ち会った人たちの歓喜に満ちた声。抱き合って喜ぶ姿。
それらを見た時、私は涙が出た。
こんなに劇中の人たちとの感情の乖離がある事があっただろうか…
本当に恐ろしいと思った。

オッペンハイマーの作り笑いを見る度に辛くなる。
しかし、勇んでマンハッタン計画に介入したのはオッペンハイマー自身。
愛国心が故なのか、どこまでいっても科学者と言う性なのか…
湖のほとりで話したアインシュタインとの会話を最後に持ってくるあたりがより一層、こちらの心に追い打ちをかけた。
観終わった後に、こんなに相反する感情が綯い交ぜになるなんて。
「凄い映画を観た!」と高揚感が得られたと同時に、人間とは恐ろしく、愚かな生き物だなと虚無に包まれたし、誰かに話したいけど話す事にも痛みを伴いそうで怖いし。

そして何と言っても配役の妙。
これだけ登場人物が多くても迷う事はないし
(名前が覚えられなかったのは私の記憶力のせい)
キリアン・マーフィーが本当に良かった。
あとラストのエミリー・ブラントの表情サイコーだった。笑
あと、あの人出てるって聞いてないし!

この映画のおかげで歴史の一端を勉強できた事がとても有難い。
コレは唯一の被爆国の日本人だから観るのがしんどいとかそう言う短絡的な括りではないと思う。
別の国に落とされていたら無関心でもいいのか?
そうではないはず。
こうやって戦争になり兵器が開発され生死に関わらずたくさんの犠牲を生み出してしまったんだなと当時の方々に想いを馳せるきっかけになった。

そして、それは今もなお私たちの生活に地続きになっているという事だ。


2024-16