「罪を犯しておいてその結果に同情しろと?」
映画館へ行っては戻り、それくらい観ることを躊躇った映画でした。
“原爆の父”オッペンハイマーの苦悩にスポットを当て、爆音や眩暈のするような映像、1時間58分後という仕掛けなど映画としては面白い作りになっているというのが素直な感想、さすがノーランです。
直接的なシーンがないのに震えが止まらないほどの恐怖と正体不明の不安を感じたのは、私が日本人だからでしょうか。
無音の瞬間が息もできないくらい怖かったです。
劇中の言葉で「爆弾は善人も悪人も無差別に殺す」とありましたが、それが戦争であり、
貢献した人物でさえコマのひとつにすぎません。
映画というだけでエンタテインメントになるのでしょうが、昨年の問題画像が出るのも頷けました。
実験結果に歓喜する関係者たちと同様に盛大な爆発としか捉えられないほど、
知らない人にはこの映画から原爆投下後の画は想像できないのです。
ノーランがこの映画で描いたのはあくまでもオッペンハイマーについてであり、
もし彼が違う箇所に焦点を当てていれば、私たち日本人は観ていられないのではないかと思うのです。