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オッペンハイマーのhydrangeaのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.7
私はこの作品をを反戦・反核映画と受け止めた。

リンゴに青酸カリを仕込む青年ロバートの成長譚としても秀逸(女性遍歴も⁈)

そもそもロバートが研究したかったのは、科学現象としての核爆発であって原子爆弾じゃなかったわけで…
しかも原爆は、日本に落とすために開発されたわけではなく、当初はドイツと競うためであり、実際開発メンバーはユダヤ人が主なので、反ナチス感情がテコになっていただろうし。

それがナチスの降伏で意義を失って、行きがかり的な政治判断で日本に落とされたという歴史の皮肉…

彼はその成り行きと結果にじゅうぶん苦しんでいたと思う

と同時に、彼が当初本当に恐れていたのは、アインシュタインに語っていた、無限に連鎖する核分裂反応が大気に発火して地球を燃やし尽くす可能性がゼロではないことで、トリニティで実際それは起きなかったけれど、核保有国が増えて水爆実験が繰り返されるその後のことを語っているようでもあり…

にしても、物理屋オッペンハイマーも感じ悪いとこあったとはいえ、彼に絡む靴屋ストローズが人間臭いというか、虚栄心、被害妄想、執念深さにまみれた嫌なヤツ。ロバート・ダウニー・ジュニア、オスカー授賞式の態度との相乗効果もあってグッジョブw

私は共産主義者ではないけれど、共産主義にも良きところはあると思っていて、当時のアメリカはソ連を敵対視していたから全否定していたけれど、ロバート周辺の若者たちが惹かれていた理由もわかる…

オッペンハイマーって咽頭がんで62歳で亡くなっているのよね
トリニティでの被曝が原因かなと思ったり…

トリニティって、キリスト教の三位一体(父、子、精霊)で唯一神を表す言葉。ユダヤ人の彼がこう名付けた意味って何だったんだろうと思ったり…

人間には未知なことを知りたい、理解したい、作り出したいという欲求があって、それが文明に繋がるわけだけれど、もはや人間には使いこなせない高度な技術を生み出す知能の暴走を、知性が手なづけられないというのが現代の問題なのかな…と思う。進化するAIに関してもシンギュラリティ問題での懸念が浮上してきているし。
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