41歳の春

オッペンハイマーの41歳の春のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.5
テーマがテーマだけに日本での公開はないかもと思われていた一本。
今年のアカデミー賞ほぼ独占状態になったのを期に日本公開が決まったような印象。

個人的にノーランは本当に当たりハズレ激しすぎる監督だが間違いなく21世紀を代表する映像作家なので見に行った。
今回は難解な方のノーラン作品という評判を事前に聞いていたので一応ある程度予習しての鑑賞。

結果あんまよくわかんなかったよね。
ノーランお馴染みの時系列前後するところに関しても事前に情報仕入れてたからある程度は分かったけど俺の苦手な人物錯綜系のサスペンス風味な感じだったので多分細かいトコ全然分かってねぇんじゃねぇかなぁ。
マー大体のあらすじはなんとかわかった気になれたから前作のテネットみたく何がなんだか皆目よくわからない状態ではなかったんだけれども。

日本人目線での批評として原爆被害の直接描写が殆ど無いのでコレは受け入れられないといった批判があるみたいけど自分としてはソレはあまり感じなかった。
というかむしろそれなりにはあったように思う。
アメリカの商業映画としてはよく入れ込めたほうじゃねえのとも思った。

ていうかこの程度の問題で本作が日本公開スルーされそうになってる事実の方が引く。おそらくアカデミー賞独占状態というトリガーがなければ本作は日本公開スルーされてたわけでしょ。我が国の原爆に対する感覚は随分とナイーヴよね。
太平洋戦争では加害者としてしか見られない我が国が唯一被害者ムーヴできんのが原爆界隈の事象ということもおそらくあるんでしょうけど。

おそらく批判してる諸氏はそもそも本作を見ておらず原爆被害の直接描写が無いという事実だけで脊髄反射的に批判しているんでしょうね。
本作は2024年のアカデミー賞を多数受賞して少なくとも今後数十年歴史には残る作品になった訳で、その様な作品で今迄の彼らの言い分のような、アレは必要だったのだといった文脈外からのアレはやはり問題だったのではないか的な作品が現れたという事だけでも肯定的に評価すべきなんじゃないのかね。
お隣の中韓では原爆被害ざまぁ的な人民が山程いる事実からして欧米が少なくとも真摯な反省モードに入りつつあるように見えるということは日本人にとっては慶賀すべきことなんじゃねぇの。
マーとにかく本作が劇場かけられて良かったですね。
ただその欧米の姿勢は現実味帯びつつある中国の台湾侵攻を踏まえて日本を西側に所属させつづけるためのポーズというかヨイショでしかない可能性はあるんだけれども。

本作はその原爆云々というよりもその後の赤狩り時代のオッペンハイマー氏の受難がメインテーマになっており、かなり辛気臭いものになっており、原爆云々よりもヒャッハーするためだけに映画見に来る米国人がよくアレだけ見に行ったよな。
アメリカでの興業成績がかなり好調という話だったからもっとヒャッハー的描写てんこ盛りだと思ってたんだけど辛気臭い話を3時間近く大した盛り上がりも無いままにスクリーンを眺め続けなきゃならなかったのは正味な話しんどかった。マー内容が内容だけにあまりヒャッハー的感じを前面に出されてもポンニチとしてちょっとアレな部分はあったけど。

ただマーあの様な内容の作品が興業成績も良く、またアカデミー賞も獲ったということは本当に意外。
内容としては本当にヒャッハー要素ほとんど無く基本赤狩り時代のネチネチ詰められる描写ばかりの様に思ったので本作が興業成績良かったのはホント意外。

ここでの評判でIMAX必須という意見が散見されたのでわざわざ万博IMAXGTレーザー環境で見に行ったけどぶっちゃけ本作は普通のスクリーンでも全然いいと思う。
ただ音質が良い方が本作にはいいと思う。音の要素が濃い作品。
ただお馴染みのハンス・ジマーじゃなかったのがちょっと意外。ジマー風味てんこ盛りだったすけど。クレジットみてちょっと驚いた。

ただ本作観た米国人たちが一体何を思って本作を評価しているんだろうとは思う。自分たちにとっての都合の良い現実しか認めないという意味では彼らは我々以上に邪悪な人々でしかない訳だが、その彼らが一体何キッカケで変わったのだろう。
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