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デューン 砂の惑星PART2の傘籤のネタバレレビュー・内容・結末

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

この映画が描き出すのは、「決別」についてだ。
チャニはラスト、自らがサンドワームに乗ることで、ポールやフレメン、つくられた英雄譚に支配された構造からの離脱を試みる。彼女は彼女のサーガをつくるため、既定のルートから外れて生きようと決意するのだ(そのことはつまり原作からの逸脱も意味している)。彼女がポールと決別するとき、それは『DUNE』という物語そのものに、新たなサーガが宿ることを意味するのだ。
その意思を、ヴィルヌーヴはチャニという存在を通して描く。
それは『ボーダーライン』のラストで、銃の引き金を引くことができなかったケイトと重なる。銃弾を放つことができなかったケイトは本作においてついに引き金を引いたのだ。『ブレードランナー2049』においてKにとっての慰めであり、良き理解者”以上の役割”を持つことが叶わなかったジョイというヒロインを覚えているだろうか。私にはチャニが、ドゥニ・ヴィルヌーヴのフィルモグラフィーにおける「状況に支配され続ける人物」のひとりでありながら、そこから果敢に離脱を試みようとする人物のように思えてならない。
状況を受け入れ、死を受け入れること。未来を知りつつも我が子を”愛する”決意をすること。それらの決断は悲壮感に満ち、かつて私の心をつかんで離さなかった。しかし本作でヴィルヌーヴはそんな自身がたどってきたルートそのものに疑義を呈するようなラストを提示する。
圧倒的で不可能な現実に対しNOをつきつけ、己の道を選ぶということ。
私にとって『デューン 砂の惑星 PART2』は、決別と、決別した先にある現実を正視しようともがく者の視点についての映画だった。
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