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デューン 砂の惑星PART2のtaatのレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
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「ドゥニ・ヴィルヌーヴが魅せる、”名作の気配”。」

救世主の予言、ポールの未来視、
そして、戦争の足音と、支配者としての破滅の予感__。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ版DUNEが魅力的な要因の一つは、そういった何かの気配/予感を常に感じさせる語り口にある。

原作にある莫大な情報量を映像化するためには、当然ながら要素の取捨選択や、セリフによる説明が必要かということを精査しなくてはならない。

ヴィルヌーヴはどこまでの情報をきちんと説明するか、どこからを私たち観客の想像力に委ねるかというバランスを完璧にコントロールしている。

ストーリーは、シンプルだが着実に、堂々と前進し、
そこに残される大いなる余白に観客の心は惹きつけられる。

その余白を私たちは想像し、そして困惑する。
ポールの見る幻視や、予言の言葉を聞いて、これからどんな戦いが起こってしまうのだろうかと。

しだいに私たち観客も、劇中のフレメンたちと同様に不安と高揚の混じった気持ちで物語の行先を見つめることになる。

そんな我々をポールは力強く先導する。自分こそが救世主であると。
彼の姿は人々が崇拝したくなる気持ちが分かるほどに魅力的で、だからこそ終盤の戦いのシーンに興奮してしまう。

一方で本作は、復讐のおぞましさや、支配することの危うさも同時に匂わせる。
終盤以降のチャニの眼差しに象徴されるその懐疑的な視点も、この映画を重層的な作品にしている理由の一つだ。

映画史に残る名作というのは、莫大な興行収入をあげるとか、何年にも渡って評価され続けるとか、そういった後天的な要素だけでなく、初めから名作たる風格が漂っているような気がする。

ドゥニ・ヴィルヌーヴが描くDUNEは、そんな名作の”気配”を私たちに見せる。
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