Lauraさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

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クワイエット・プレイス 破られた沈黙(2021年製作の映画)

3.5

三場面の危機が同時進行する、カットバックなしではありえない緊張感。この手法を生んでくれたことをグリフィスにあらためて感謝したくなる映画。

飢ゆるアメリカ(1933年製作の映画)

3.5

第一次世界大戦〜世界恐慌前後のアメリカ社会を考えるうえで重要な作品だと思う。大戦後の復員兵の栄光と挫折、富める資本家と労働者の貧困、機械と人的労働力、コミュニズムと赤狩り、重たい社会問題がいくつも織り>>続きを読む

殺人者(1946年製作の映画)

3.5

『マルタの鷹』『三つ数えろ』『過去を逃れて』に並ぶ40年代のプロット錯綜系フィルム・ノワール。分かりづらさの一因は畳みかけるような人物と固有名詞の登場にあり、たとえば主役のバート・ランカスターはピート>>続きを読む

鴛鴦歌合戦(1939年製作の映画)

3.0

時代劇×オペレッタ、ありなのか?!と思いきや、天下のマキノに千恵蔵、志村喬、ディック・ミネと芸達者が揃って何の心配もなく観られるのであった。

七つの顔(1946年製作の映画)

3.0

最近、終戦直後の日本の雰囲気を知りたくてこの時期の映画をよく観ている。片岡千恵蔵の七変化で魅せるこの映画、剣戟映画は軍国主義的で好ましくないと戦後GHQからお達しがあり、娯楽映画の新しい方向性が模索さ>>続きを読む

風の中の牝鷄(1948年製作の映画)

3.5

タイトルは戦後の荒廃した世の中で懸命に生きる女を暗示したものだろうか。経済的困窮から妻が身売りするといういかにも重い話で、倫理と感情のはざまでもがき苦しむ亭主の姿も小津としては確かに異色ではあるのだが>>続きを読む

洲崎パラダイス 赤信号(1956年製作の映画)

4.5

いわゆる赤線地帯のことを知ろうとすると映画を観るか専門書を当たるしかない。永井荷風が通った玉の井は戦前の東京の私娼窟の代表格だが、ここは空襲でほぼ壊滅してしまい往時の面影を知ることはほとんど出来ない。>>続きを読む

祇園の姉妹(1936年製作の映画)

3.5

山田五十鈴が弱冠19歳とは信じられない貫禄で、大女優の謂れがよく分かる。日本髪の姿には凄みすら漂う。意地を張ろうと知略を凝らそうと、結局自分たちは男が支配する社会の底辺、籠の中の鳥なのか、という芸者の>>続きを読む

破れ太鼓(1949年製作の映画)

3.0

阪妻が今は絶滅した昭和のパワハラ頑固親父を演じる。家庭でも職場でも独裁を敷く父親に対する、子供たちそれぞれの反抗と和解がテーマ。演出の独創性は同じく大きな洋館が舞台の『春の夢』におよばないが、戦後5年>>続きを読む

無頼の谷(1952年製作の映画)

3.0

フリッツ・ラング×テクニカラー×西部劇。マレーネ・ディートリッヒがならず者たちの隠れ家「チャカラック」の女主人を演じている。チャカラックとは作中にも出てくる垂直型ルーレットのことで、当初はこれがタイト>>続きを読む

犯罪王リコ(1930年製作の映画)

3.5

暗黒街の人間たちをハリウッドの映像文法で描いた最初の作品。この翌年に製作された『暗黒街の顔役』『民衆の敵』に先駆ける。ナイトクラブの裏の室内でアームチェアに腰掛け、葉巻をくゆらせる男たちを見ていると、>>続きを読む

マン・ハント(1941年製作の映画)

3.5

フリッツ・ラングの反ナチス&戦意高揚映画。中盤以降ご都合主義で展開が読めてしまう部分もあるが、何と言ってもジョーン・ベネットの役どころが素晴らしい。ロンドンの街娼だが、上流階級の主人公が自分に手を出し>>続きを読む

チャイルド・プレイ(2019年製作の映画)

2.0

1988年の方は未見。いろいろな事の説明がないまま事件を起こしすぎていてよく分からない話になっている。B級ホラーだろうがスラッシャーだろうが、しっかりした脚本は大事ではないのだろうか?
楳図かずおに『
>>続きを読む

幻の女(1944年製作の映画)

3.5

いたはずの人間が忽然と消えてしまうという設定はヒッチコックの『バルカン超特急』を思わせるが、こちらはより異常犯罪者の描写にフォーカスしている。セリフのテンポの良さや展開の速さよりもシンボリックな絵で魅>>続きを読む

拾った女(1953年製作の映画)

4.0

1953年、赤狩り真っ只中のハリウッドで作られたフィルムノワール。ニューヨークの満員電車の中で男たちが美しい女を窃視している、この冒頭のシチュエーションからして素晴らしい。女が引き渡しに失敗したフィル>>続きを読む

飾窓の女(1944年製作の映画)

4.0

フリッツ・ラングはラストの数分まで緊張感を持続させるのが本当に上手い。主人公は死体を無事遺棄できるだろうか? カンのいい刑事から逃げきれるだろうか? 男は女の用意した飲み物に手をつけるのだろうか…? >>続きを読む

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)

4.0

天使たちはベルリンの上空を、市内を、家の中を、自由に飛びまわる。ドイツ語、フランス語、英語、日本語、他言語が飛び交う街の中。あらゆる存在と意識をひと続きにしてしまう天使のまなざし。そこに「私」と「あな>>続きを読む

サウルの息子(2015年製作の映画)

3.5

カメラは強制収容所の中で前から後ろから横から、ひたすら主人公を追いかけてゆく。深度の浅い映像で主人公の背景は常にボカされ、捨象される。それ自体映像的にはかなり思いきった試みなのだが、収容所で話される様>>続きを読む

殺しの烙印(1967年製作の映画)

3.5

殺し屋の組織の内部抗争を描いたサスペンス。話としてはシンプルなのだがもちろん一筋縄ではゆかない相当に不条理な鈴木清順ワールドで、日活の社長を激怒させたらしい。そもそも米の炊ける匂いにエクスタシーを覚え>>続きを読む

大いなる幻影(1937年製作の映画)

3.5

第一次世界大戦でドイツの捕虜になったフランス将校が脱走を試みる話。戦争を通じて階級差の問題や愛国心、そしてホモソーシャルの友情を描きだし、なおかつ脱獄というテーマで最後まで緊張感を持続させている。ドイ>>続きを読む

ウィッチ(2015年製作の映画)

3.0

17世紀に新大陸に入植したピルグリム・ファーザーズのある一家が、信仰の違いによって集落から追放され、森に棲む魔女への恐怖に狂わされてゆく。鬱蒼とした森や炉に照らされた家の中の様子は美しく、魔女の集会の>>続きを読む

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)

3.5

流れ者のヒーローがマイノリティに手を差し伸べ共同体全体に変革をもたらす、その構造自体は古典的なハリウッド映画のそれでありもちろん美化や綺麗事も含まれているのだけど、「水俣病の娘を入浴させる母を捉えたあ>>続きを読む

桜桃の味(1997年製作の映画)

4.0

「人生には生きる価値がある」という普遍的で、手垢がついているようにもおもえるメッセージーー映画全体がそこに収斂してしまいそうな地点からスッと身をひるがえすラストの鮮やかさ。夕陽に溶け込む中東の街並みを>>続きを読む

彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド(2018年製作の映画)

3.0

第一次世界大戦から100年の節目のために、主戦場の欧米では過去の映像を通じた多くの振り返り作業が試みられたはずだ。製作側の立場を愚考してみるに、使う映像資料は他の製作チームとどうしたって重複するだろう>>続きを読む

狂った一頁(1926年製作の映画)

3.5

字幕のない無声映画で、物語の筋を読み取るのが少し難しい。映画史的には、精神病患者の病態をフィルムにおさめることは、第一次世界大戦のシェルショックを受けた兵士たちの様子にはじまり、当初は記録的な意味を持>>続きを読む

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)

3.5

考えてみれば第一次世界大戦の塹壕戦は長回しの撮影技法と親和性がないはずはないのだが、これまで誰もやっていなかったことが逆に不思議におもえる。

去年の夏 突然に(1959年製作の映画)

3.5

この映画を観て初めてエリザベス・テイラーの美しさが感得された気がする。彼女の本当の魅力は『陽の当たる場所』のような紋切り型の令嬢役よりも、本作のような心理的に闇を抱えた女性の役で発揮される。彼女のしっ>>続きを読む

白い巨塔(1966年製作の映画)

3.0

何度も映像化されている原作だが、本来その真髄は大阪弁に乗せて医学用語が繰り出される情景にあったのかも知れない。

愛を語れば変態ですか(2015年製作の映画)

2.5

『愛のむきだし』(2008)を観て、何となくタイトルから同系統の話かなと思って選んだが勘違いだった。前者の「愛」の壮大なロシア文学のようなスケールに比べると、全然「愛を語れ」てない。タイトルを再考して>>続きを読む

雨に濡れた欲情(1953年製作の映画)

3.0

サマセット・モーム原作『雨』は、これ以前にもハリウッドで数度映画化されており、グロリア・スワンソン(1928)、ジョーン・クロフォード(1932)という、1920年代〜30年代を代表するヴァンプが主人>>続きを読む

陽はまた昇る(1957年製作の映画)

3.0

20世紀FOXのタイロン・パワーとワーナーブラザーズのエロール・フリン。戦前のハリウッドを代表する二大剣戟映画スターの共演、40年代ならどんなに話題になったことか(いや、公開当時もそれなりに話題にはな>>続きを読む