鈴木ピクさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

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乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…(2023年製作の映画)

3.4

ともかくシネマスコープサイズの絵作りの良さ。

決して映像の情報量が多い訳ではなく。ただ少しずつ光沢を帯びたような撮影で立体的に浮き上がり、左右の余白、あるいは横長だからこそできた悠長な構図でそこにス
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レッドタートル ある島の物語(2016年製作の映画)

3.7

たった一つの島、増えても最終的に三人きりの登場人物、そして台詞はなし。すべてをただアニメーションで伝える。
その為の技術が過不足なさ過ぎてすごい。
人物の表情も最低限の点と線(『花とアリス殺人事件』は
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ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画(2013年製作の映画)

4.2

ケリー・ライカートの映画は移動の映画だという文章になるほどとなった上で観賞してるのですけど、本作は静謐なスリルを孕んだ移動を中盤の主軸に据えているとは言え、主人公は基本的に行き先を持たない。

ただ話
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ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)

4.4

移動を描く作家としてケリー・ライカートを見てきたけど、本作いよいよ最初から停泊する安寧の地をもたない、移動が常態の漂流する女性を主役に描く。

冒頭では森の中で彼女ウェンディが愛犬ルーシーと過ごす束の
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枯れ葉(2023年製作の映画)

4.5

人工的な暖色のトーンの中、無表情の男女が惹かれ合っていく過程を淡々と、孤独やみじめさへの共感とユーモアの余地を忘れずに丁寧に構築していく。
移民三部作以前の内容をセルフパロディにしたようでいて、老境超
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劇場版 ポールプリンセス!!(2023年製作の映画)

2.8

見せ場は確かにすごい。

最初はちょっと不自然にさえ思える3DCGのポールダンスが、けれど実際にポールダンサーの動きをモデリングしているだろう実感として伝わってきて、「あぁ人の動きってこんな事もできる
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ハンガー・ゲーム0(2023年製作の映画)

3.7

ブロック分けされた敗戦国の子供たちが殺し合いに興じさせられ、おかしなシステムだとは思いつつも戦勝国の子供たちは彼らの「教育者」(「メンター」は訳さず「メンター」でよくないか)としてペアになり殺し合い開>>続きを読む

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)

4.8

ツイートの写しで失礼。大傑作。

例えば動物、あるいは子役たちをメインにした優れた実写映画への賛辞で下駄をはかせたくなるのはそこに一段上の撮影の難度が生じるからで、その感覚は本来アニメには適用されない
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屋根裏のラジャー(2023年製作の映画)

4.4

試写で観賞 こんなに埋もれるならもっとプッシュすべきだった

そも予備知識ゼロだった為もあり、イマジナリーの存在を提示していく序盤、まだこれが教条主義に陥りあくまで「幼少期の麻疹」で終わらせるのか否か
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青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない(2023年製作の映画)

4.2

青ブタ高校生編完結。

原恵一かと見まごうほぼフィックス寄りの静謐な画面で汎用ラノベのセリフ回しをしながら、描かれる内容は若者、というか子供たちに訪れる不条理で抗えない心理的負担の数々。

最後は主人
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リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)

4.3

ケリー・ライカートの初期作。

あらすじは確かに「郊外で暮らす鬱屈した主婦コージーの家出」なのだけど、プロット上起こることは「紛失した拳銃」の行方を追うサスペンスであり、しかし『オールド・ジョイ』で顕
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コマンドー(1985年製作の映画)

3.6

Twitter眺めてると完全に見たことある気になってるけど実は見た事ない映画ってあるじゃないですか。

と言っても幾つも思い浮かぶ訳ではなく、自分にとっては圧倒的に本作がそれ。
吹き替え版入りが売りの
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ほつれる(2023年製作の映画)

3.8

令和の日本でこの綺麗な生活をしている奴らはなんなんだ!

という憤りは脇に置いて。(まぁ「あのこは貴族」だから)
過剰に綺麗に統御された画面の中で、人妻・門脇麦が人に誇れることではない秘密の逢瀬の中、
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オールド・ジョイ(2006年製作の映画)

4.2

ケリー・ライカート作品初鑑賞

子供が生まれそうなアラサーの男は、不機嫌な妻に負い目を感じつつも古い親友と二人きりのドライブに出る
多少は迷うがさしたる困難もなく二人は美しい山中で無人の露天風呂を浴び
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MONOS 猿と呼ばれし者たち(2019年製作の映画)

4.6

天空の世界で無邪気に生きる猿のような蛮族のような少年兵たちの世界。
取り留めなく、しかし荘厳な雲上の光景が続く前半から、次第に話が見えてくるにしたがって場面は密林へ移行し視界は阻まれ、そして「猿たち」
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三姉妹(2020年製作の映画)

4.5

バラバラに暮らす三姉妹の生活が点描されていく。
長女はどうも切迫してるらしき状況でガンに冒されていることを隠しながら生き、次女は宗教団体幹部を切り盛りしながら贅沢な生活をしているが危うさと紙一重であり
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アイドルマスター シャイニーカラーズ 第2章(2023年製作の映画)

2.3

格別な思い入れがあり、そのシナリオから拡張した価値観数知れないゲームenza版アイドルマスターシャイニーカラーズ。そのアニメ版がポリゴンピクチュアズのCG版アニメと知り如何にがっかりしたか、そして第一>>続きを読む

アウトレイジ 最終章(2017年製作の映画)

4.0

今世紀入ってからの北野映画に何度失望したかわからないのでもう未見のまま放置していたけれど、どうにもアウトレイジシリーズだけは目が離せない。
ただヤクザ同士が啖呵を切り合い勢力図が窺い知れていくだけの前
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ザ・キラー(2023年製作の映画)

3.9

序盤誰が見ても印象的だと思うのだけど、主人公の暗殺者が建物の最上階で狙撃の準備をし、向かいの高級ホテルのVIPを照準で確認する。この際のシステマチックに精確に横移動するカメラ。
これが、いざ暗殺に失敗
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夏へのトンネル、さよならの出口(2022年製作の映画)

4.2

ポスト新海誠的映画、というか精確には、

「台湾ニューウェイブ」⇒「相米慎二、岩井俊二ら台湾ニューウェイブ以降の邦画」⇒「それら邦画の影響受けて育った細田守や新海誠や岡田麿里の青春アニメ」⇒「それらの
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駒田蒸留所へようこそ(2023年製作の映画)

3.3

立体的な光源を活かした撮影による背景美術が印象的なP.A.WORKSのもう一つの顔、吉原正行監督『有頂天家族』シリーズが見せた平面的な光彩のコントラストを活かした絵画的なアートワークの中に、今回は加え>>続きを読む

アイドルマスター シャイニーカラーズ 第1章(2023年製作の映画)

2.3

アイドルマスターシャイニーカラーズ、通称シャニマスはとにかくインパクトのあるゲームだった。

確か最初のうちはありふれたアイドル育成ゲームの面をしていたと思う。 それほどハマらず適当にログインしたり放
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タイラー・レイク 命の奪還2(2022年製作の映画)

3.7

ネトフリオリジナル映画のどこか突き抜けない空気感と、徹底的に突き抜けた超絶長回しアクションとが同居している珍妙な映画シリーズ第2弾。

前半でこれでもかっていう長回しアクションを見せつけながら、後半で
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北極百貨店のコンシェルジュさん(2023年製作の映画)

4.1

シンプルに、前後の脈絡関係なく一本の、それも非常にタイトでいて短い中に無駄なくぎっしりな上映時間の、万人に開かれた絵柄のアニメーション映画が、しかも音楽tofubeatsで!、上映されている事が嬉しい>>続きを読む

ジョン・ウィック:コンセクエンス(2023年製作の映画)

4.3

一作目に惹かれた要因、「『殺し屋界の掟』」という虚構を前提としたストーリー構成のどこか図式化した美しさが復活。

前作などは強さのインフレ、文字通りの「三時間」が縦に伸びて長く感じたけど、今作は鳥瞰し
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キリエのうた(2023年製作の映画)

2.1

岩井俊二監督の演出はバレエのようなものだと思う。
身軽に見えて、多数見ると厳格な振り付けがあるとわかる。悪く言えばパターンが。
その振り付けを心地よく存在させるためには世界そのものの固有のリアリティラ
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G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ(2021年製作の映画)

3.4

去年かな、遅まきながら2を見て主人公が前半で死亡していたことを知った(役者が続けたくなかった為)G.I.ジョーのスピンオフ。

日本のフィルムコミッションが本格的にハリウッドに協力した第一弾として、カ
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ダーク・ハーヴェスト(2023年製作の映画)

4.1

アマプラに入った新着映画で、全米でも配信公開が始まったばかり。

60年代の田舎町。毎年ハロウィンになると怪人「ソートゥース・ジャック」が現れて教会を目指し人を襲うので、この町の少年達は深夜0時を迎え
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真夜中からとびうつれ(2011年製作の映画)

2.4

2011年制作、わずか13分の短編映画。

横浜聡子監督、多部未華子主演。
いかにもチープな自主映画で、廃屋を舞台に象徴的な行為でもっともたらしく「映画」をやっていこうとして、あまつさえその題材が「映
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グランツーリスモ(2023年製作の映画)

4.2

映画体験ってやはり鑑賞環境によって左右される一期一会のものだと思う。実は舞台などリアルイベントと変わらない。割と普遍的な上映で観たからこそ、より強く思った。

今回は
・本作の制作状況の小話をTwit
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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

4.7

アフター6ジャンクション2×filmarks日本最速試写会にて鑑賞。

白人から文化も言語も奪われ搾取されかけていたインディアンのオセージ族が石油を掘り当て一転、世界トップの富裕層となるも、後見人とし
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ヴァイラス(1998年製作の映画)

4.0

レリック、ミミック、スフィア。。。みたいなB級SFスリラーがハリウッドのメインストリームで堂々と量産されていた時代の一本。
電子機器と一体化してしまうドナルド・サザーランドのビジュアルをやたらプッシュ
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イコライザー THE FINAL(2023年製作の映画)

4.0

『イコライザー THE FINAL』

フーテンの寅ことロバート・マッコールさんが旅先シチリアの人々と触れあいながら癒やしの時間を得て怪我を回復した後、畳みかけるようにほぼ一瞬でマフィアを壊滅させる男
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オオカミの家(2018年製作の映画)

4.3

この映画を語る語彙がない。

実際に大きな部屋のセットを建て、その空間を舞台に変容を続ける不気味なクレイアニメーションがワンシーンワンカット(広義のワンカット)で持続する。

ドイツ系移民がチリに入植
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あしたの少女(2022年製作の映画)

4.2

完膚なきまでに告発映画だ。

アマプラの『ザ・レポート』ばりに直球で、その為に作られた構成。
『新聞記者』の何が無駄な贅肉だったかもよくわかる。

前半である少女の日常を追い、やがて彼女は自死に至る。
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ほの蒼き瞳(2022年製作の映画)

3.2

19世紀、イギリスの陸軍士官学校の閉鎖的な空気の中で起こる連続殺人。
その調査に使わされたアメリカ人をクリスチャン・ベールが演じるが、本作の肝はそのパートナー的存在となるのが学生時代のエドガー・アラン
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