そーいちろーさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

イン・アワ・ディ(2023年製作の映画)

3.3

カンヌ監督映画週間にて。英文字幕だった。こういう機会がなければ、日本でホン・サンスを観られる機会は限られるので、ありがたい。本作はここ最近のホン・サンス作品において、特に玄人感を感じさせる、普段以上に>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

2.5

VFXは凄い。そして、ゴジラの底知れぬ不気味さの演出も良かった。特攻を逃げ帰ってきた男、という主人公の設定も悪くない。でも細かなディテールが気になった。ゴジラの放射能汚染問題みたいなものがほとんど描か>>続きを読む

ゴーストワールド(2001年製作の映画)

4.5

十年ぶりぐらいに映画館で再見したけど、これはどう考えても奇跡のような映画だろう。アメリカインディ映画の金字塔であり、あらゆる青春映画の金字塔ともいうべき作品だ。それは何もあの当時のソーラバーチやスカー>>続きを読む

(2023年製作の映画)

3.5

今年ジャニーズ問題が騒ぎとなり、当然ジャニーがやったことは許されることでないのだが、日本の衆道の歴史を鑑みると、ある意味でこの事態は、日本社会の抱える前近代的な関係性と捉えることが出来るかもしれない。>>続きを読む

シチリア・サマー(2022年製作の映画)

3.7

実際にあった「ジャッレ事件」というイタリアのシチリア半島で起こったゲイカップルの殺害事件を基にした映画だった。クライマックスに近づくまでその事実を知らなかったので、結構驚いた。舞台はシチリア半島。街で>>続きを読む

水の中で(2023年製作の映画)

3.8

フィルメックスで観た。前評判で「まるで水中撮影のようにピンボケが凄い映画で、その映像に衝撃を受ける」と聞いていたので、どんな感じかと思いきや、それは案外早い段階で慣れた。また、全部が全部、ピンボケ映像>>続きを読む

アイスクリームフィーバー(2023年製作の映画)

1.8

多摩シネマフォーラムで、関戸公民館のヴィータホールで観ました。監督はこれが初作。アートディレクションとかをやられていて、映画好きで映画を撮るのが念願だったと。どこかしら王家衛の「恋する惑星」を思わせた>>続きを読む

殺られる前に殺れ(1964年製作の映画)

3.0

非常にオーソドックスなフィルムノワール。宇津井健演じる主人公が仇を撃ち、傷害で刑務所に入る。刑期を終えて出てくると、主人公の女は仇の男に乱暴され、シャブ漬けにされて自殺していた。そして、仇の男は今はキ>>続きを読む

ハズバンズ(1970年製作の映画)

3.8

濱口竜介がこれを観て、映画監督を一生の仕事に決めるとか「パッション」はこの映画の冒頭で、葬式で偶然集う同級生のシーンから着想を得た、とかって作品で、前から気になってたので観られて良かった。不可思議なロ>>続きを読む

ひなぎく(1966年製作の映画)

3.3

プラハの春以前に描かれた、チェコのヌーヴェルヴァーグと呼ばれた作品。ジャックリヴェット「セリーヌとジュリーは舟でいく」も影響を受けたのであろうことを感じさせるガールズムービー。途中まで明滅する画面、氾>>続きを読む

ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家(シネアスト)(2022年製作の映画)

3.5

ゴダールという映画監督を理解するための一つの手段となりうる映画ではあった。四章構成で、第一章が鮮烈なデビューを飾った勝手にしやがれの頃、第二章が映画業界を超え、時代の象徴となり天下を収めた60年代中盤>>続きを読む

パリ、テキサス(1984年製作の映画)

3.9

これで観るのは通算で三度目、映画館では十年ぶりぐらいで二度目なのだが、何度観ても人間関係のままならなさとか、どれだけ互いに愛情があったりしても、それが掛け違えてしまうと、上手くいかなくなってしまうもん>>続きを読む

ことの次第(1981年製作の映画)

3.8

いわゆる映画作りをテーマとした映画内映画、メタフィクション、劇中劇といったものであるのだが、不思議な映画であった。筋としては、ポルトガル・リスボンで「生存者」というか近未来の疫病が流行った世界を舞台と>>続きを読む

アリスとテレスのまぼろし工場(2023年製作の映画)

3.2

岡田麿里は岡田麿里だなぁ、と思わせる作品。基本的な物語の構造は「千と千尋」とか「すずめの戸締まり」とほぼ同じ。この二つは異世界へ飛び込んでいく話だが、本作は異世界側となってしまった世界を舞台にした物語>>続きを読む

憂鬱な楽園(1996年製作の映画)

3.4

映像はスタイリッシュだし、映し出される台湾の風景も最高。音楽もカッコいい。話も盛り上がりそうで、面白そうだと思ったけど、なんとなく尻切れトンボで終わり。「悲情城市」「童年往事」とは違うテイストを志向し>>続きを読む

マイ・プライベート・アイダホ(1991年製作の映画)

3.5

もっと地に足ついたロードムービーなのかと思いきや、どこか浮遊感漂う不思議な感触の映画だった。そのざらついて淡い、原色ぽい映像も含め、凄い夢みたいな映画だった。厳しい境遇にある青年と、財産家の息子だが満>>続きを読む

ソナチネ(1993年製作の映画)

4.2

ずいぶん前に早稲田松竹で「キッズリターン」との二本立てで観て以来の再見なのだが、この作品に余計な批評は必要ないように感じる。圧倒的な映像美と、ラスト含めて徹底的な美学に透徹された、ほぼ完璧と言っても差>>続きを読む

その男、凶暴につき(1989年製作の映画)

3.8

問題行動が目につく刑事が、管内の麻薬取引に関わることで、その出所が警察内部からの横流しである事実に行き当たる。調査をしていく中で物語はどんどんと悲劇的な展開を迎え、全ては崩壊へと突き進む。いわゆる典型>>続きを読む

少年、機関車に乗る 2Kレストア版(1991年製作の映画)

3.5

ファルーとアサマットの兄弟が医師の父親に会いに機関車に乗って長旅をし、その様子を映したロードムービー。ファルーは弟を父親に任せたいと考えていて、そのためにこの旅に出たのだが、アサマットがまぁまぁな発達>>続きを読む

Pearl パール(2022年製作の映画)

3.4

シリアルキラー夫婦のハワードとパールの、パールがなぜあんなふうになってしまったかを描いた前日譚なんだが。結論から言うと、パールがいわゆるサイコパスだから、という身も蓋もない結論を、終始描かれ続ける感じ>>続きを読む

X エックス(2022年製作の映画)

3.3

ポルノムービーで一攫千金を狙った一行が撮影に利用しようと田舎町に行ったら、頭おかしい老夫婦が住んでて、酷い目に遭う、っていうホラー映画。身も蓋もないけど、筋はマジでこれだけ。旦那がハワード、奥さんがパ>>続きを読む

アンダーカレント(2023年製作の映画)

3.7

寡黙な映画。夫の突然の失踪という出来事に見舞われた、銭湯屋を切り盛りする女性かなえ。そこに、自分を雇って欲しいという男が現れる。かなえは小さい頃から不思議な夢を何度となく見る。その夢がなんであるのかは>>続きを読む

あなたの顔の前に(2020年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

判断に悩む映画ではあった。途中まではアメリカに移住した姉と、韓国で暮らす妹の年配の姉妹を通じた会話劇と、ありがちな日常を、いつも通りの会話劇とシチュエーション展開ばかりで、そこにホン・サンスのミューズ>>続きを読む

イントロダクション(2020年製作の映画)

3.5

ミニマリズムの徹底と本質的な人間ドラマの組み合わせにより、今現在において世界の映画シーンで孤高の存在となり、その旺盛な創作意欲は、完璧に60年代ゴダールや創造社時代の大島組を思わせるホン・サンス。まさ>>続きを読む

秘花 〜スジョンの愛〜/オー!スジョン(2000年製作の映画)

3.8

悲劇の映画女優、イ・ウンジェの初主演作をまさかホン・サンスが撮っていたとは。本作はそれ以降の本作が繰り返し行う、同一シチュエーションを細かな差異によって、異なる展開を描き出す映画によるループ展開構造、>>続きを読む

カンウォンドの恋(1998年製作の映画)

3.8

韓国の観光地らしい江原道を舞台に満員の特急列車に向かう女子大生、現地の警察官の男、教授職を求める既婚子持ちの大学教員男性などが入り乱れつつ展開される群像劇。そこにある夫婦の疑惑の転落事故も差し込まれる>>続きを読む

ファルコン・レイク(2022年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

なんか想像していたのとラスト10分ぐらいから大幅に方向性が変わり、結局どういうこと?って考える映画ではあったんだけど、童貞青春映画としての佳作であることは間違いない。おそらくバスティアンが幽霊なのかな>>続きを読む

豚が井戸に落ちた日(1996年製作の映画)

4.0

今のホン・サンスと表層的な作風は全然異なり、終始不気味だし、今の彼の映画よりも非常に肉欲的な画面作りである。それはいわゆる韓国映画的な生々しさ(金綺泳的)と底冷えするような怖さを感じさせるわけなのだが>>続きを読む

カナリア(2004年製作の映画)

3.3

題材も良い、映像も良い、役者たちの演技も素晴らしい…でも突き抜けた傑作となり得ていないのは、脚本の甘さかな。素人が少しカチャカチャやったぐらいで警察の手錠が開くとも思えないし、なんというか展開が都合良>>続きを読む

エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版(1994年製作の映画)

3.8

煌びやかな都会の世界で、軽やかに生きているように見える男女の恋愛模様を通じて、実際は不器用にしか生きられない人々が、さまざまな関わりを通じて自分にとってふさわしい生き方、自分に嘘のない「誠実」な生き方>>続きを読む

小説家の映画(2022年製作の映画)

3.8

タイトル通りの映画。ふらりと後輩が書店をやっている街に降り立ったスランプに陥った小説家が、偶然その街で以前に自分の作品原作で映画を撮ろうとしたが、スポンサーの意見で断念した映画監督夫婦に出会い、しばら>>続きを読む

童年往事 時の流れ(1985年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

侯孝賢が見つめる視線は哀しさと優しさに満ちている。生と死が同居する世界で、その往来は緩やかに巡ってくる。

主人公のアハは、どうやら侯孝賢本人をモデルにしているようで、言うなればこれは私映画である。
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風が踊る デジタルリマスター版(1981年製作の映画)

3.2

巨匠にもこういう時代があるんだな、と思わせる非常にメロドラマチックなある種通俗的な一作。ラストのストップモーションの終わらせ方が「大人はわかってくれない」を思わせ、良かったが、まぁあとはありがちな一作>>続きを読む

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版(1991年製作の映画)

4.5

映画館で観るのは三回目なんだが、改めてこの映画の到達点は、まさに青春が示す「一際眩しい夏の日」と、その夏が暮れていく終わりを映画というフォーマットを通じ、鮮やかに描き出したがゆえなんだろう。

凄い映
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(2021年製作の映画)

3.5

「オオカミの家」と併映で鑑賞。なかなか狂ってて、良かったです

オオカミの家(2018年製作の映画)

3.4

ストップモーションや実写を混ぜ込んだアニメーションの独自性はもちろん、不穏さを称えた映像も凄いのだが、本作は単体だけでなく「コロニア・ディグニダ」というナチ残党がチリの山奥に作った入植地、その実は狂っ>>続きを読む