そーいちろーさんの映画レビュー・感想・評価

そーいちろー

そーいちろー

バスケット・ケース(1982年製作の映画)

3.2

ザB級ホラー。それなりに筋立てはしっかりしてて、結合双生児で奇形だった兄を殺そうとした女医(実は獣医師だったことも判明)に復讐を果たそうとニューヨークまで来た兄と弟の話。幽遊白書の戸愚呂兄弟のモデルは>>続きを読む

さらば、わが愛/覇王別姫 4K(1993年製作の映画)

4.0

中国版の「マリアブラウンの結婚」だね、これは。3時間弱あるけど、途中途中で劇的なシーンを入れる事で飽きる事なく一気に観られる作品。京劇という中国の伝統演劇を下敷きとして、揺れ動く現代中国に翻弄されなが>>続きを読む

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)

4.5

映画館で初めて観た。35mmで観られる喜び。円熟味を増したエドワードヤンは、どこかかつての彼自身の作品をリミックスするかのように、台北の文教地区の高級マンションに暮らすある家族のひと夏の様子を通じ、生>>続きを読む

異人たち(2023年製作の映画)

2.8

途中までは助演のポールメスカルもあって、「アフターサン」「アフターヤン」系の死人を思う(メメントモリ)物系で、いい感じかなぁと思っていたら、ラストでシックスセンスじみた展開となり、「ALL OF US>>続きを読む

GONIN(1995年製作の映画)

3.8

石井隆美学が炸裂したフィルムノワール。香港フィルムノワールかペキンパーか、といったような映像美が爆裂し、アウトロー達の企てとその破滅までを見事に描き切っていた。タランティーノは石井隆にも強い影響を受け>>続きを読む

あるじ(1925年製作の映画)

4.2

なんてことない映画である。事業で失敗し、不満を募らせ家族にあたることでしかその憂さを晴らせないヴィクトル。家族を支えつつ、ヴィクトルの痛みに寄り添いつつ健気に家庭を盛り立てる妻イダ。その二人を支えるお>>続きを読む

吸血鬼(1932年製作の映画)

3.8

吸血鬼ってなんなんだろう、と思っていたし、なぜ十字架に弱いのかと言うと、この作品を観るとよく分かった。要するに吸血鬼も悪魔狩りの一種で、さまざまな伝承があるんだろうが、何らかの疫病にかかった人を人々が>>続きを読む

ミカエル(1924年製作の映画)

3.8

ドライヤーは変にプロットにこだわらず、シンプルな筋で壮麗かつ荘厳な映画を観せてくれるため、好きだ。背景には強固なキリスト教的価値観があり、本作は要するに堕天使ミカエルに関する物語を、孤独な老画家とそこ>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.2

とりあえず、無事に本作が日本公開されて良かった。下手するとハリウッド映画史に残る一本と思えるぐらいの労作、傑作だった。本作は「原爆」という大量破壊兵器を生み出してしまった天才科学者の苦悩と孤独を描いた>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

3.3

秒速5センチメートルと花様年華を足して、両者の濃密な部分、えぐみをこそげ落として、そこに文化の違いを足し込んだような映画だった。男の方が初恋とか叶わなかった恋愛にこだわるってのは万国共通なのかなぁと思>>続きを読む

ソウルメイト(2023年製作の映画)

3.7

想定していた内容より、かなり情緒的な展開かつ昔の韓流的などんでん返し展開が後半立て続けに発生するのだが、プロットの勝利、というかかなりこじつけ感はあれど、前半からの謎(誰がコハウンの名前で、コハウンの>>続きを読む

ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争(2023年製作の映画)

3.3

ソニマージュと後期の作品を自称していたゴダールだが、本作はそのより原始的な姿、というか本当に絵コンテを見せてもらった感じ。現実を知ってるから、ってわけじゃないが、濃厚な断念と死に満ちた映画ではあった。>>続きを読む

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)

3.5

設定が色々ありえないし、おそらく本作の最大の魅力の一つである狂児と聡実の疑似的な同性愛的関係性もあまりピンと来るものでなかったのだが、映画としては非常に良かった。山下敦弘監督は、古き良き日本映画の作り>>続きを読む

ヴェルクマイスター・ハーモニー 4Kレストア版(2000年製作の映画)

3.5

当たり前だけど、タルベーラ映画だからよく分からん。酷く荘厳で、美しい白黒画面。過剰なまでの長廻し(今回改めて観ると、ここまで長廻しをしようとすると、相当に作為的なカメラポジションが求められることがよく>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

3.5

タイトル通り、3時間ひたすらボーがおそれているだけの映画ではある。何を恐れているか。強大な母性愛であり、その実像である母だ。母を恐れるあまり、あらゆる外部の世界を恐れるボーの唯一の救いは思春期に出会っ>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

3.5

移動プラネタリウムのナレーションに至るまでの壮大なフリに近かった。そこでドカンと仕留める感じは、嫌いではない。三宅唱の映画は静かだ。静寂がかえって、その静寂に潜む音が反響してしまうぐらいに静か。ざらつ>>続きを読む

砂の器(1974年製作の映画)

4.2

橋本忍特集の2本目。前半のある種凡庸な刑事サスペンスから、後半の犯人である和賀英良の犯行動機の説明を丹波哲郎演じる刑事が説明する場面からのハンセン病の父と、息子の裏日本を南下していく旅の様子と、今は新>>続きを読む

影の車(1970年製作の映画)

3.7

新文芸坐の橋本忍特集で「砂の器」と一緒に観た。ありがちな転落劇ものではあるのだが、構成が秀逸。狭い団地で子供のいない妻との結婚生活に息苦しさを感じている旅行代理店に勤める主人公は帰宅時のバスの車中で偶>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

3.8

ヨルゴスランティモスは現代映画界において、最もヘンテコで非道徳な作品を創り出している。そして、どの作品においても非常に効果的に「動物」を用いており、必然的に作品に現れる人間達との対比により、「人間とは>>続きを読む

3-4x10月(1990年製作の映画)

3.9

初期の北野作品は、本当に無駄なBGMが用いられない。そして極端なまでに日常と非日常たる暴力の放出が突然起こる。それはもはや日常と非日常が地続きである、とかそういうレベルではなく、日常の中にそういう暴力>>続きを読む

シェイン 世界が愛する厄介者のうた(2020年製作の映画)

3.4

音楽ドキュメンタリー映画として音楽も良かったし、ポーグスの背景にある歴史や社会的事情も分かりやすく説明されていて良いドキュメンタリー映画だった。

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー(2022年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

2024年1本目。あらすじをなんとなく調べたら、ミッドサマーぽい感じだったので観に行った。

母を自殺で喪ったショックから立ち直れていない主人公ミアが孤独を癒そうと親友ジェイドと気晴らしに出かけたパー
>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

3.6

結論から言えば、いつものアキカウリスマキである。それは現代のおとぎ話であり、悪くいえばご都合主義だ。でも、それよりも何よりもこの混迷した2020年代に、アキカウリスマキがまた映画を撮ってくれた、という>>続きを読む

イン・アワ・ディ(2023年製作の映画)

3.3

カンヌ監督映画週間にて。英文字幕だった。こういう機会がなければ、日本でホン・サンスを観られる機会は限られるので、ありがたい。本作はここ最近のホン・サンス作品において、特に玄人感を感じさせる、普段以上に>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

2.5

VFXは凄い。そして、ゴジラの底知れぬ不気味さの演出も良かった。特攻を逃げ帰ってきた男、という主人公の設定も悪くない。でも細かなディテールが気になった。ゴジラの放射能汚染問題みたいなものがほとんど描か>>続きを読む

ゴーストワールド(2001年製作の映画)

4.5

十年ぶりぐらいに映画館で再見したけど、これはどう考えても奇跡のような映画だろう。アメリカインディ映画の金字塔であり、あらゆる青春映画の金字塔ともいうべき作品だ。それは何もあの当時のソーラバーチやスカー>>続きを読む

(2023年製作の映画)

3.5

今年ジャニーズ問題が騒ぎとなり、当然ジャニーがやったことは許されることでないのだが、日本の衆道の歴史を鑑みると、ある意味でこの事態は、日本社会の抱える前近代的な関係性と捉えることが出来るかもしれない。>>続きを読む

シチリア・サマー(2022年製作の映画)

3.7

実際にあった「ジャッレ事件」というイタリアのシチリア半島で起こったゲイカップルの殺害事件を基にした映画だった。クライマックスに近づくまでその事実を知らなかったので、結構驚いた。舞台はシチリア半島。街で>>続きを読む

水の中で(2023年製作の映画)

3.8

フィルメックスで観た。前評判で「まるで水中撮影のようにピンボケが凄い映画で、その映像に衝撃を受ける」と聞いていたので、どんな感じかと思いきや、それは案外早い段階で慣れた。また、全部が全部、ピンボケ映像>>続きを読む

アイスクリームフィーバー(2023年製作の映画)

1.8

多摩シネマフォーラムで、関戸公民館のヴィータホールで観ました。監督はこれが初作。アートディレクションとかをやられていて、映画好きで映画を撮るのが念願だったと。どこかしら王家衛の「恋する惑星」を思わせた>>続きを読む

殺られる前に殺れ(1964年製作の映画)

3.0

非常にオーソドックスなフィルムノワール。宇津井健演じる主人公が仇を撃ち、傷害で刑務所に入る。刑期を終えて出てくると、主人公の女は仇の男に乱暴され、シャブ漬けにされて自殺していた。そして、仇の男は今はキ>>続きを読む

ハズバンズ(1970年製作の映画)

3.8

濱口竜介がこれを観て、映画監督を一生の仕事に決めるとか「パッション」はこの映画の冒頭で、葬式で偶然集う同級生のシーンから着想を得た、とかって作品で、前から気になってたので観られて良かった。不可思議なロ>>続きを読む

ひなぎく(1966年製作の映画)

3.3

プラハの春以前に描かれた、チェコのヌーヴェルヴァーグと呼ばれた作品。ジャックリヴェット「セリーヌとジュリーは舟でいく」も影響を受けたのであろうことを感じさせるガールズムービー。途中まで明滅する画面、氾>>続きを読む

ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家(シネアスト)(2022年製作の映画)

3.5

ゴダールという映画監督を理解するための一つの手段となりうる映画ではあった。四章構成で、第一章が鮮烈なデビューを飾った勝手にしやがれの頃、第二章が映画業界を超え、時代の象徴となり天下を収めた60年代中盤>>続きを読む

パリ、テキサス(1984年製作の映画)

3.9

これで観るのは通算で三度目、映画館では十年ぶりぐらいで二度目なのだが、何度観ても人間関係のままならなさとか、どれだけ互いに愛情があったりしても、それが掛け違えてしまうと、上手くいかなくなってしまうもん>>続きを読む

ことの次第(1981年製作の映画)

3.8

いわゆる映画作りをテーマとした映画内映画、メタフィクション、劇中劇といったものであるのだが、不思議な映画であった。筋としては、ポルトガル・リスボンで「生存者」というか近未来の疫病が流行った世界を舞台と>>続きを読む

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