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銀河英雄伝説・本伝 第1期のmatchypotterのレビュー・感想・評価

銀河英雄伝説・本伝 第1期(1988年製作のアニメ)
4.7
観てしまった。ついに観てしまった。
今まで『機動戦士ガンダム』『宇宙戦艦ヤマト』と同ジャンルかと思って、そっちで満足してたら。

、、、観てみたら全く違う。個人的にはこっちの方が好きかもしれない。
印象として『課長島耕作』『キングダム』の方が近いかもしれない。

絶対的に不動で強力な“反戦的”人物像の主人公が織りなす激動の戦火の中での葛藤や人間模様、かと思ったら。
そういった要素もあるにはあるのだけれど、それはそれで良いのだけれど、そこではないというか。

人類が宇宙に脱した先の壮大な舞台の中で、“いずれも正義”とする帝国軍と自由惑星同盟との2大陣営の中で対極的に生きる2人の将校が、会うこともなくお互いの存在価値を認め合い、生きる目的と生きる場所を探し、お互いの生き方、在り方を尊重し合いながらも、ルーツの違いからぶつかり合う。

この重厚で、悲しくもある対峙。
自由惑星同盟の軍人、ヤンウェンリー。
自分自身は戦争を好まず、ブランデー飲みながら静かに暮らしたい性格の人物。
しかし、心理学的な知識を兼ね揃え、戦争における戦術の才覚がズバ抜けていて、死にたくない、仲間を犠牲にしたくない思いから、放り込まれた大戦で金星をあげてしまうが故に結果的に出世してしまい、もっと大きな重積を担うことになっていく。

帝国軍のラインハルトフォンローエングラム。
貴族が支配する体制と愛する姉を思う心から、この国をもっと良くしたいと願い、そのために持って生まれた家柄と頭脳と野心で成り上がる青年。

無二の親友キルヒアイスがラインハルトを公私共に支え、彼の正義が道を逸れぬように見守る。

このシーズン1の26話は、その始まりと序章、2つの大極の鍔迫り合いの中で見出し、お互いの存在を認め合うキッカケのような助走に過ぎない。

なのに、いや、だからこそ、その2つの勢力同士の構造や、お互いの勢力が抱える闇も含めて描かれている。
ただの勝った負けたの話でもなく、2人の勢力争いだけでもなく、どっちが正しいかという話でもない、どっちが得かという話でもない。

戦いたくないが自分前に立つことで失われずに済むものもあると諦めながら矢面で出世していくヤンと、民主主義だと正義っぽいことを言っておきながらかなりエグい統制して腐敗している自由惑星同盟。

その自由惑星同盟に敵対し圧政を敷くも、実態は一部の名家的な貴族の血筋が牛耳り、私欲のために振り回される怠惰な帝国軍と、その支配体制に疑問を持ち、だったら自分が世を良くするのだと野心を燃やし、そのためなら手段も選ばず時には泥水吸う勢いのラインハルト。

この対比。
善と悪があって、善が悪に滅ぼされかけてるとか、悪に負けるな善とか、最後は民主主義が正しいのだとか、そんな安直な話ではなかった。

民主主義の中にも犠牲はあって、帝国主義にもほつれとそれを良しとしない者もいる。

その構造が、全体的に影響しあってどこか哀愁すら漂う戦乱として描く物語と2人の様相に心打たれる。

この2人以外にもキャラがたくさん出てきて、キルヒアイス始め、渦中の2人を支えながらも、時には身を挺してでも彼ら2人の本来の主張を彼ら以上に体現し、道に反れそうになったり、迷って立ち止まる彼ら2人に刺激を与える。

層の厚い人材と、それを情報過多でごちゃごちゃさせず、人物像や時代設定、その時々の局地的な背景をしっかりと整理して描く展開がとても素晴らしい。

全く観たことなかった初心者でも、ちゃんと観てればこの壮大な話やそれぞれのキャラクターやその行動の動機にちゃんとついていけた。これが何より嬉しい。

でも実際、途方もない話。地球から飛び出した人類がそれぞれで成長しながら何百年と発展した後の話なので、宇宙規模で人口も肥大している。

故に戦争の規模も毎回戦艦3万vs戦艦5万とかで、軍隊や死者の数も桁違いで想像を絶する。

しかしながら、果てしない国と国と戦いである中で、ろくに会って会話してもいない“個”と“個”の駆け引きでもある。いや、むしろそこが本質に思える。

相手の策にハマってるフリしながら相手の大事な拠点を無血で奪取したり。
自分の国の情勢がおぼつかなくなり相手に攻められてる場合ではないと見ると、相手国の裏側に仕掛けて相手国にもクーデター起こさせて相手も自国のことに奔走させたり。

“策士”と“策士”の駆け引き。
こんな途方もない大国同士の明日を見るか見ないかの戦いを1人と1人で背負って貫かんとする互いの“正義”。

そして、この26話の展開。

「ラインハルト、あなたと私は生き方が違うのです。私は疲れました。あなたも疲れたならば私の元に来なさい。だけど、あなたはまだ疲れてはなりません」

果たして“民主主義”とは何なのか。
果たして“自由”とは何なのか。
ここまで見せられてもまだまだ序章感がハンパない奥深さ。

毎回毎回、部分的な政治的背景、力の拮抗、その場にいる兵や民の心情を説明してくれるので本当にわかりやすかった。

これはまた近々先を覗いてみよう。

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TSUTAYA DISCAS運営の映画コミュニティサイト「Discover us」にて同アカウント名でコラムニストをさせて頂くことになりました。
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別視点で色々映画について書いていこうと思います!ご興味ある方は是非お待ちしております!
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