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リコリス・リコイルのShingoのレビュー・感想・評価

リコリス・リコイル(2022年製作のアニメ)
3.2
本作のヴィランである真島は、ことあるごとに「バランス」を口にするが、この作品自体がバランスをすごく意識した作りになっていたと思う。

戦闘美少女の文脈に則りつつも、その範囲の中で可能な限り、テロの脅威と平和を維持するための代償について描こうという意思が感じられる。リアルと虚構という相反するものを、どう上手く作品の中でバランスをとるか。
また、キャラが可愛ければそれでいいという視聴者のニーズに応えつつも、シリアスさ、ハードボイルドさをどこまで出せるのか。
重くなりすぎず、キャラ萌えに走りすぎずという着地点を探りながら、ストーリーが展開していった印象。

リコリスの存在は、相田裕『GUNSLINGER GIRL』を想起させる。こちらも対テロ機関「社会福祉公社」によって、義体化手術を受けた少女が、殺し屋として暗躍する。
銃器についてのうんちくが多く、ガンマニア向けの作風であり、少女はより年齢が低い設定だ。そこから漂う、色濃いオタク臭を脱臭したのが本作であると言ってもいいかも知れない。

また、『シティーハンター』との類似も指摘されるが、どちらかと言えばその続編である『エンジェル・ハート』の方に影響されていると思う。主人公の香瑩は、裏社会の殺し屋であるが、自殺を図るも槇村香の心臓を移植されて生き返る。
その縁で、シティーハンター冴羽遼に引き取られ、家族のような関係になっていく。海坊主のコーヒーショップで働く設定も、本作と類似していると言える。

北条司は『エンジェル・ハート』の前に『F.COMPO(ファミリー・コンポ)』を連載しており、これは夫婦二人が性別逆転夫婦であるという設定であった。
本作でも、ミカと吉松はゲイカップルであり、千束を二人の娘のように描いているが、これらは上記2作品の影響を強く受けているように思われる。

かわいい女の子キャラがわちゃわちゃしている場面も多いが、割とストーリー重視だし、風呂敷を広げすぎずに、うまくまとめてあったと思う。
オタク受け要素抜きにアニメを作れない現状で、かなり健闘していたと思う一方、本作から「戦闘美少女」を差し引いて作ったらどうなっていただろうと思わないでもない。
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