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ONI ~ 神々山のおなりのShingoのネタバレレビュー・内容・結末

ONI ~ 神々山のおなり(2022年製作のアニメ)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

控えめに言って傑作。
キャラクターの造形、ストーリー、ストップモーション的な絵作りなど、すべてが高いレベルで融合している。また、日本人監督ということで、日本の自然や古典文化が正しく描写され、日本人が見ても違和感を覚えることはない。それでいて、ピクサー仕込みの演出によって、日本のアニメとはまたひと味違った印象を与える。

日本を意識したコマ撮りアニメといえば、トラヴィス・ナイト「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」や、ウェス・アンダーソン「犬ヶ島」があげられるが、これらは割とアート寄りで、大人向けに作られていた。
また、実写のコマ撮りであるにも関わらず、人形制作や撮影技術が向上し過ぎた結果、逆にCGアニメとあまり変わらない印象になっていたのも事実だ。
その点、本作はフルCGであるのに、実写と見まがうような"実物感"を描き出すことに成功している。

主人公のおなりがグレートヒーローを目指すという設定は、「僕のヒーローアカデミア」を思い起こさせる。
また、多くの人が本作から「もののけ姫」を連想するだろう。
おなりの立ち位置は、山犬の娘サンと酷似しているし、戻り橋の向こうにいるバケモノは、タタリ神のようにも見える。
宅地開発される山林と、住む場所を追われていく神々。SDGsが啓蒙される現代においても、そのテーマは古くはなっていない。だが、本作で描かれるのは、自然と人間の相克というよりは、多様性と寛容さだ。

物語の構造は、むしろ「進撃の巨人」に近い。神々の住む山は「壁の中」であり、壁外人類こそが"鬼"として描かれる。しかし、「壁の外」に行ってみれば、そこにいるのは日常を送っているだけの普通の人間だ。
そして、本当におそれるべき“鬼”は、外部の敵ではなく、自分の中に巣くう"恐れ"と"不安"なのだ。

闇落ちした”なりどん”を救うため、おなりは「どんつこつこつこ、わっしょい、わっしょい!」と踊り出す。古来、神や怨霊の怒りを鎮めるために、踊りを奉納するのが日本の伝統だ。その意味でも、この展開はすごくまっとうだ。
もちろん、なりどんとおなりの“親子の絆”を象徴する踊りでもある。
力で相手を打ち負かす結末にしないところが、現代的とも言える。

しかし同時に、もし自然を怒らせれば、人間の社会もただではすまないことを示唆する。
むやみに自然を破壊すれば、雷神・風神が嵐を起こし、雷を降らせる。その結果、大雨による大災害が起き、川は氾濫し、甚大な被害をもたらすことになるかも知れない。
本作は日本が舞台であるが、自然との共存や、人種差別、血の繋がらない親子など、現代的な世界共通のテーマを内包している。
Netflix独占配信なのが、逆に惜しまれる。もっと多くの人が見るべき作品だ。
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