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ペーパー・ハウス・コリア: 統一通貨を奪えのCinemanのレビュー・感想・評価

4.0
「ペーパー・ハウ・スコリア  統一通貨を狙え」
A Netflixシリーズ全12話
キム・ホンソン監督
2022年 韓国
鑑賞日:2024年 2月18日 Netflix

役者、演出のテンポ、物語の展開、すべて心地良い。
チーム9人のキャラクターが生み出すハーモニーが絶妙でウェルメイドなエンタテイメント!
造幣局に押し入って自分たちで紙幣を印刷して逃走するという設定は55年前にロードショーで観た『新・黄金の七人』(1968 イタリア)と同じだ。

【物語の概要】
ヘッドフォンから流れる音楽に合わせて振り付けを真似ながら大学の階段を降りる女の子。
この物語は彼女のモノローグから始まる。

「BTSファンのことは“ARMY”(=軍隊)って呼ばれる。彼らは世界中にいる。もちろん北朝鮮にも。幼い頃からこっそり韓流に触れてきた私にとってごく自然なことだった。私がほかのARMYと違うのは本当にARMY(軍隊)に入ったこと」

板門店で首脳会議が行われてから数年、統一への期待が薄れ始めた頃、変化は突然やってきた。
南北が統一することが決まった。
「両国は共同経済区域を設立し統一貨幣を発行し・・・」とテレビで報じた。
彼女は即決したった一人でソウルに向かった。

ソウルには巨大な南北共同経済区域が開発され大手企業はその区域に続々と参入し新しい経済活動の実験を始めておりその区域に訪れた北朝鮮の人民にとっては夢のような街だった。
電車内からその街を眺める北朝鮮の乗客たちは満面の笑みを浮かべていた。
まさに希望に溢れた街。

北朝鮮からの移住者でごったがえす希望の街で彼女は不動産仲介業者に騙され身ぐるみはがされてしまう。
夢も希望も失い大衆食堂でウエイトレスを続けても生活は苦しく風俗店でも働き始める。
トラブルに巻き込まれて強盗となり荒んだ生活を続け絶望の淵に立たされた彼女が裏道でこめかみに拳銃を当てた時、男が声をかけてきた。

「移住者を利用する悪党相手に盗みを働いているのは君だね。悪党を懲らしめて世の中は変わったかい?大きな計画があるんだ。手伝ってくれないか。小金を盗んだ奴は殺されるか刑務所に入れられる、だが莫大なカネを盗んだ者は世の中を変えそして英雄にもなれる」

「いくら盗めば世の中は変わるの?」と彼女は尋ねた。
「4兆ウォン。どうせ命を命を捨てるなら私に委ねないか?」

彼女は男に従うことにした。
彼女と同じように教授にさそわれた強盗のプロ8人が集められ、それぞれ世界の都市にちなんだ愛称が名付けられ、彼女はトーキョーと呼ばれるようになった。
2025年のことだ。

“教授”と呼ばれる謎めいた人物が北朝鮮と韓国から桁外れの報酬を約束して8人の泥棒のプロフェッショナルが集まり南北統一直前の韓国造幣局に押し入り局員たちを人質に立てこもる。
人質にした造幣局の職人誰一人も傷つけず数日間かけて南北共通紙幣を自分たちで印刷して逃亡する。
警察当局はかれらを捕まえることが出来るのか・・・。
ホントに面白いドラマでした。

【Trivia & Topics】
✥本作はリメイク。
本作のオリジナルは2017年から2021年までスペインで放送され大ヒットした「ペーパー・ハウス」(全50話)。
本家スペイン・ヴァージョンではチームはダリのお面を被っていたが、
韓国版では韓国の伝統的な“河回仮面 (ハフェタル)”の仮面をまとってコミカルかつ不気味さが増している。
朝鮮半島の再統一に直面している架空の共同経済区域の造幣局をねらうという設定がこのリメイク版の深みを増している。

✥キャスティング
それぞれ世界各国の都市名で呼ばれる強奪チームのキャラクターがいい。
特にお気に入りは教授が最も信頼する仲間として活躍する「刑務所のルールブック」に主演したパク・ヘス。

✥元ネタは『新・黄金の七人』か。
銀行強盗ものの映画は数々あれど造幣局に押し入って自分たちで紙幣を印刷して持ち出すという計画は55年前に観た『新・黄金の七人』(1968 イタリア)を思い出させた。

黄金の七人シリーズと名付けられた作品は4本公開されている。
◯『黄金の七年』(1965)
“教授”に率いられた7人のメンバーがスイス銀行から7トンの黄金を盗み出すことに成功したものの仲間たちの騙しあいが始まり・・・。
「ルパン三世」の元ネタと言われている作品。
日本テレビで放送していた“水曜ロードショー”第一回放送作品だ。
チームの紅一点セクシーでゴージャスなロッサナ・ポデスタの色香にくらくらっとしました。

公開当時17歳の感想です。

ー1966年7月8日鑑賞メモよりー
『オーシャンと11人の仲間』(1960)、『トプカピ』(1964)などと同じ種類のやつ。
やはり、一人の天才の指示のもとに6人の各国のえりぬきがそろって金を盗む、まんまと盗んだのはいいが、ひょっとしたことで・・・と前二つとスジは全く同じといってよい程である。
一つ言わせしてもらうと、やはり各国から集めたのだから一人ひとりの特長を出せばよかったと思う。
それに、楽しいのは最後に「この七人の手がけた次の仕事は・・・どうぞ代二作をごらんください、ただいま撮影中」などと予告編めいたとこが仲々ニクイと思った。 批評:A下
P.S.ちなみに映画のラストが予告編になる手口は東宝の「社長シリーズ」(1956~1970)の何作目かでパクっていた。

シリーズ第二作目。
◯『続・黄金の七人 レインボー作戦』(1966)
映画館は渋谷宝塚、併映作品はマカロニ・ウエスタン『真昼の用心棒』でした。

ー1967年3月9日の鑑賞メモよりー
『オーシャン・・・』、『トプカピ』、『黄金の七人』・・・etcとまだ計画が成功した映画がないし、成功はしないと解っていても楽しい。
『オーシャン』でのシナトラ、『トプカピ』でのマクシミリアン・シェルの役をこの映画ではちょっとビル・エヴァンスばりのフィリップ・ルロワが演じている。
常に指導者的人間のタイプは似ているのも決して偶然ではないだろう。
また、この映画は前回の『黄金の7人』より以上にロッサナ・ポデスタが目の色、毛の色、ドレスの色が、めまぐるしいほど変化し、濃厚なお色気をふりまくのも見もの。34歳だってのに可成なもんだよ!なんて喜んでいてはダメ!
とくにぼくがこの映画を好むのは絶対に人を殺すなという教授のおたっし。この映画では血を見ないというところが、アルセーヌ・ルパン的大泥棒気質のようなものが感じられる。
また、機械にものすごいお金をかける点でもお金のために盗むのではないことが感じられる。
前の作品でも教授が自分の部屋にいながら作業現場を見られるテレビや無線があり、ボクシングマシーン、ホーバークラフト、人間ロケット、人間の脳を調べて普通のレーダーではキャッチできない脳波を調べられる電波送信機、など、とにかく莫大な金をかけて教授が創ったものが登場する。
そして、今回の映画でも8人の中で金の奪い合いが始まり、女が最後に裏切るが結局彼らがジュネーブの大金庫に預けた金が引き出せなくなり、また7人そろって道路工事人夫にばけて穴を掘り始めるといったラストに笑ってしまう。
批評:A下 ちなみに併映作の『真昼の用心棒』の評価はB中。

そして3本目が、
『新・黄金の七人 7×7』(設定が『ペーパー・ハウス』と同じ)
4本目が、
『黄金の七人 1+6 エロチカ大作戦』
ただしこの2本は監督も役者も異なる柳の下の何匹目かのドジョウ的作品。

【5 star rating】
☆☆☆☆
(☆印の意味)
☆☆☆☆☆:超お勧めです。
☆☆☆☆:お勧めです。
☆☆☆:楽しめます。
☆☆:駄目でした。
☆:途中下車しました。
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