Renz

アメリカン・フィクションのRenzのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
3.8
インテリ小説家のアフリカ系アメリカ人の主人公。ヒット作に恵まれずに自分が毛嫌いしている、ステレオタイプの黒人ギャング作者回想ものを皮肉で書くもヒットしてしまい、作者を演じなければいけない状態に…。というお話と、主人公自体の家族の問題を描いた作品。

ブラックスプロイテーション作品の問題は昔からあったものだが、今はまた別の形の問題がある。
白人(自称)人権派の自己満足に利用されているという点だ。
どんな人種でもインテリがいるのは当然で多種多様の作者、小説があってしかるべき。でも好まれるのはステレオタイプ、な現状である。

じゃあインテリ主人公が本作で全て正しいと描かれいるかというと、そういうわけではない。

主人公は医者ばかりの家政婦のいる上流階級の家庭の生まれで、お金が無いのは家族の離婚や母親の介護施設の入居のため。
家族の人間関係や金銭問題等に気付かないまま生きてきている。彼は気難しい性格として描かれていて、恋人や他人にたいしてもモラハラ傾向があり、亡き父親に似ていると言われる始末である。
また、黒人文学と自分の本を一括りにされるのを嫌がっていて、ステレオタイプとはいえ実際にある黒人文化を低俗として毛嫌いしている。

そんな問題を描きながらも主人公の小説はついには映画化の話まで来てしまい、一体どうなってしまうのか?

本作はコメディとして笑えるタイプとはいえない。しかし、会話や内容は面白く興味深く、するする観れてしまうのが素晴らしい。そういう意味では良く出来てる。

ただ、小説ひとり歩きドタバタものと、インテリ主人公自体と家族の物語が結びついていない感じがして、どちらも微妙な終わり方をしてないか?と思っている。
もっと主人公巻き込まれドタバタコメディとして、皮肉たっぷり入れながらやれば良かったんじゃないかな?

主人公の名前がセロニアスだからモンクと有名なジャズピアニストの名前を使ってるのに、何で最後に流れるのがマイルスの枯葉なんだ!?って一応キャノンボール名義のやつだった。
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