ふっかー

異人たちのふっかーのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.1
昨年11月に亡くなった、脚本家山田太一の原作映画「異人たちとの夏」のリメイク版。
なぜ監督はそれをリメイクしようと思ったのか。

同性愛のシーンは濃厚で正直いって共感とまでは...。
だけど濃厚だからこそ、主人公アダムの過去の記憶と苦悩、両親への思いがより強く表れて観ている者に響いてくる。誰もが大なり小なり持っているであろう普段は封印している心の傷。そんな内面を話せて理解してくれるパートナーがいたら、同性異性問わず素晴らしいことだと思います。

またアダムと両親のシーンがいい。いや、両親がとても良い。もっと息子の成長と成功を見たかったのに見られなかった。そんな両親の愛情が伝わってきて、ファンタジーだと分かってはいるものの、本作は家族愛の作品としても観ることができます。

今回は山田太一が原作というだけで観に行った。
はて、山田太一とはどんな人?私もほとんど知りません笑。本作以外の彼の脚本のドラマや映画は全く観ていません。ただ、人の幸せについて語ったエッセイと数冊の本を読んだことが彼を知るきっかけでした。
その幸せについて、山田太一はこう語っています。

"「人間はがんばれば何でもできるんだ」
今でもマスメディアで声高に叫ぶ人がいます。でも、そう叫ぶのは、いつでも成功者です。もちろん彼らは相当な努力をしたでしょう。でも、それは彼らの幸運や才能の中でのことで、決して普遍的なものではないのです。
多くの人にとっては、「がんばれば何でもできる」なんていうのはウソ。失敗した人は努力が足りなかった、ということになってしまう人生論は、私は単純すぎるように思います。そんな幻想が、我々の小さな幸福感を奪っているとも言えるかもしれません。"

ある意味自身も成功者である山田太一。しかし、彼の人々の心に寄り添う思いが作品に反映されていたからこそ、本作としてリメイクされたのではないか。私はそう思います。
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