爆裂BOX

リサイクル -死界-の爆裂BOXのレビュー・感想・評価

リサイクル -死界-(2006年製作の映画)
3.7
記者たちの前で、霊的体験をテーマにした「鬼域」という次回作を発表する人気女流作家ディンイン。しかし構想すらまとまっていなかった彼女はアイディアを書いては捨てるを繰り返し焦りを感じ始める。やがて彼女の周りで奇妙な出来事が起き始める…というストーリー。
「the EYE 【アイ】」やハリウッドに渡って撮った「ゴースト・ハウス」で知られるオキサイド&ダニ―のパン・ブラザーズが手掛けたダークファンタジー・ホラーです。
奇妙な現象に悩まされ、更にかつて不倫関係にあった元恋人が離婚して目の前に現れたことで更に精神の均衡が不安定になっていくディンイン。そんな中、ふとしたきっかけで彼女はかつて自分が捨てたモノや破棄した創作物のアイディアで生まれた「死界」という異世界に迷い込む、という内容です。
前半は新作のアイディアに悩み、書いては捨てるを繰り返していたディンインが、部屋の中で見覚えのない長い髪を見つけたり、奇妙な物音がする電話がかかって来たり、何かの気配を感じたりといった奇妙な現象に悩まされる姿がアジアンホラー特有のジメッとした不気味な描写や雰囲気で描かれていきます。合間に不倫関係にあった元恋人が離婚して戻って来て再会したりとちょっとメロドラマっぽいシーンもあります。
エレベーターを閉めようとしても閉まらず、そっと顔を出して覗いたらボタンの所に手があるシーンはゾッとしました。その後乗り込んでくる老婆と孫の少女が何とも不気味なお顔立ちしててこれも怖いですね。エレベーターの床に吸い込まれていくシーンも不気味でした。
それを見た主人公は慌てて建物から出ると、そこはすでに異世界になっており、異世界めぐりが始まりますが、何といっても主人公が辿っていく異世界の描写が本作一番の見所ですね。廃墟と化した九龍城塞や首吊り死体がぶら下がる森、団地の間に観覧車などがある廃遊園地、巨大な捨てられた玩具たちで埋め尽くされた世界や水子達が彷徨う体内の様な赤いトンネル、本の山が出来てそこから本がパラパラと落ちて来たり、亡者が彷徨う橋や誰も墓参りに来なくなって見捨てられた亡者たちの墓地など、主人公が進むごとに変化していく様々な異世界の描写は、次はどんな場所が現れるのだろうと期待させてくれますし、CGやセットを使ったその凝ったヴィジュアルはちょっとマイルドになった「サイレントヒル」という感じで否応なく引き込ませてくれますね。ボツにした小説のネタ等自分の捨てたモノによって作られた世界という設定も面白い。
異世界で出会った名もない少女が案内役となって、現実に戻れるという中継点目指して共に異世界巡っていく所から「千と千尋の神隠し」のようになって、一気にファンタジー色強くなっていきますが、空から次々と人が降って来たり、顔のない赤い服の女が浮遊しながら追い掛けて来たり、森で主人公に迫ってくるキリンみたいに首が伸びた自殺者達や亡者たちがほぼゾンビの様に大群で主人公に迫ってきたりとホラー描写も忘れずに挟み込まれます。さび付いて無人で回る観覧車やフライング・パイレーツ、捨てられた玩具で埋め尽くされた世界などは寂寞感を感じさせてくれます。
「the EYE 【アイ】」でもパン・ブラザーズとタッグを組んだアンジェリカ・リーが主人公ディンインを演じてますが、その陰のある美貌はホラーにぴったりですね。
案内役の少女の正体は割とすぐ予想付きますが、終盤のお涙頂戴展開もベタだけどグッとは来たかな。ただ、中絶反対や死者への敬意といった説教臭いというかメッセージ性強めな部分あるのでそれに乗れない人はいそうですね。
過去と向き合って現実に帰還してハッピーエンド…と思わせてからのラストは驚きましたね。確かに最初メガネかけてたのに途中から何時の間にか眼鏡かけなくなったなとちょっと気にはなってたけど、あの時点からそうだったのか。
とにかく凝りに凝った異世界のビジュアルが大きな見所であるダークファンタジーホラーでした。