パイルD3

ソウルフル・ワールドのパイルD3のレビュー・感想・評価

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
4.5
つい見過ごしたままのアニメーションでしたが、あらためて劇場公開されているので迷っていたら、配信で観た知り合いに、ストーリーめちゃイイ!ジャズが最高!映画館一択!と3連発すり込まれて、やってるシアターと時間をチェックして池袋へ。

で、観終えましたら…

ストーリーめちゃイイ!ジャズが最高!映画館一択!と誰かに3連発すり込みたくなりました

絶対映画館で観るべきという言い方は、映画館の少ないエリアにお住まいの映画ファンの方もかなり多いので、あまり好まないのですが、この作品を配信でしか観ていない知り合いが、誇張気味に言った映画館一択の意味はよくわかりました。

何年か前のアカデミー賞長編アニメ賞を獲ったことくらいしか知識がほとんどない状態だったので、正直クオリティの高さとパワフルな音楽に魅せられました


【ソウルフル•ワールド】

地球上にある全てのソウル“魂“についての物語を、1人の人物を通して描く。

ここに登場する“ワールド“は3つある。
ひとつは地上の人間社会、2つ目は天国の入り口にある魂を取り扱う霊界、3つ目は最後に主人公がたどり着いた世界…それは果たして何処なのか?…が、作品の主題でもある

この描き分けの繊細さは、さすがピクサーの総力が結集していて、インパクトと心地よさが絶品。
タイトルからエンドロールまで、こだわりが染み込んでいて、尻尾の先まで餡子が詰まったたい焼きを思わせる。

主人公が黒人のピアノ弾きというところが、アニメでのグローバルスタンダードの開拓者ピクサーらしい切り口で、アジア人や表示はされないがメキシコとかプエルトリコ系のキャラクターも登場する。

ソウルフルというタイトルから、ゴスペルを想像していたが、黒人の生み出した正統派ジャズの世界が主人公のライフモチーフになっている。
観た後で、直接出ては来ないが、ソウルフルから連想されるもうひとつのソウルでもあるブラック•スピリチュアルズ(黒人霊歌)が思い浮かんだ。
ストーリーで描かれる主人公が迷い込む異空間は、正にスピリチュアルそのもの。

「天国から来たチャンピオン」や「天国への階段」を思わせる魂の行き来のルールが出てきて、スピリチュアルな世界観を創り上げている。
透明度が高い線画風のコミカルなキャラクター造形や、愛らしい魂キャラは、一見子供向けらしい見せ方だが、白っぽいキャラたちに対して背景は殺風景だし、暗めのトーンでカラーリングがされている。

自分の行方を案じて、人間にはなりたくないと気まぐれな逃避を続ける22番と呼ばれる魂と、主人公との出会いから始まるやり取りの中で描かれるのは、夢の自分を探すことより、まず今の自分に向き合うこと。

つい忘れてしまっているが、本当の自分はそこにしかいない
パイルD3

パイルD3