TOTさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

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ナショナル・シアター・ライヴ 2019 「イヴの総て」(2019年製作の映画)

4.0

演劇の磁場で煮詰まる欲望。

ライトに照らされて魅せられて皆んな女優になるけれど、ライトが照らすものにまた苦しめられる。
スクリーンに映すビデオ映像は舞台空間と異なる質感や位相を作り、女優たちの脳内/
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人生、ただいま修行中(2018年製作の映画)

3.8

ニコラ・フィリベール監督は優しい。
ずっと優しい。
新作は、パリ看護学校の生徒40人を追う三部構成。
ドキュメンタリーでありながらフィクションのようにしっかりと構成されていて、でも作為的なナレーション
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ラフィキ:ふたりの夢(2018年製作の映画)

3.2

‪女性間のカラフルな愛が、法律や宗教、女性の社会的地位の低さによって困難なものになる。
展開は性急で、抑圧や差別など同性愛テーマ作品の典型のような部分もある。
けれど、創作の典型を引き受けてもケニアで
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8月のエバ(2019年製作の映画)

3.3

ロメールふう、いい映画ふう。
よくよく原題でネタバレしている。
そのネタバレのネタに、表層的な女性への勝手な崇拝と偏見を感じて鼻じらむ。
複数人物がリレーのように登場し、それなりに絵はキマる時もあるが
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ファイアー・ウィル・カム(2019年製作の映画)

3.0

‪放火の罪で服役した男の帰還、村八分、母子の静かな語らい。
Fireはなかなかwill comeしないが、眠気はあっさりとcome。
美しいカットは多々あり、リアル山火事映像は眠気も飛んだけど、物語に
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バグノルド家の夏休み(2019年製作の映画)

3.6

小粒で味わい深い母子家庭物語。
喧嘩もするけど相手を否定せず認め合う。
ケーキを分け合う優しさを忘れない。
大きな事件は起こらない。
人生を振り返ればきっと一瞬の季節、二人で生きて二人で確実に少し変わ
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ラ・ヨローナ ~彷徨う女~(2018年製作の映画)

2.3

‪グアテマラの先住民大量虐殺と中南米のラ・ヨローナ怪談が交錯する。
映像は思わせぶりで雰囲気たっぷりだけど、怪談を知ってると展開が読めるし、お膳立てはバッチリなのに恐怖描写が緩めで肩透かし。
ひたすら
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WASP ネットワーク(2019年製作の映画)

2.7

‪豪華キャストによるキューバン・ファイブ実話もの。
派手なエピソードを細切れに詰め込んで、個々なエピソード自体は面白いんだけど、ここで終わりかよ!感が強く、全体で何がしたいのかわからない。
アサイヤス
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異端の鳥(2019年製作の映画)

3.5

一羽だけ色を塗られた鳥は攻撃されて地に落ちる。
戦時下にユダヤ人少年が遭遇する迫害、暴行、性倒錯。
愛も思慕も一瞬で消える地獄、地獄、また地獄。
人間の醜悪に『悪童日記』を思い出し、陰鬱な日々で彼が強
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悪人伝(2018年製作の映画)

3.5

‪共闘して裏切って嘲笑って。
極道と刑事の越境バディがシリアルキラーを追って加速する三角関係が熱い。
アクションあり/カーチェイスあり鉄板韓国エンターテイメントはテンポ良し/サービス良し/景気良し。
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ミッドサマー(2019年製作の映画)

3.9

‪喪失と再生を、涙と笑いと阿鼻叫喚で包み込むロハスでサイケなグロテスク!
アリ・アスター監督が「いま見ましたか?見てないですか?もっかい見せますね」とばかりに繰り返すグロの親切設計が陽当たり良好。ハー
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ディスコ(2019年製作の映画)

2.5

親も宗教も選べず消耗する少女。
家父長の抑圧、過去の示唆、派閥の対比。
キリスト教にまつわるアレコレが少女の混乱を飲み込んで切ないが、導入のダンス描写のテンションと不穏さで期待した程には物語が遠くに行
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マニャニータ(2019年製作の映画)

2.8

‪極少の台詞とふんだんな歌。
緩慢な日常描写は主人公女性の痛みを語り、幾つもの歌詞がモノローグのように代弁する。
彼女の背景とフィリピンの麻薬撲滅事情がじんわり炙り出されて全体像が見えた頃に、なるほど
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バベル(2006年製作の映画)

3.4

かつてバベルの地で、天にも届く高い塔を建てようとして神に言語を混乱させられた私たちは、散り散りになった。
言語の無理解、民族の対立、人間の罪。
時制もスライドさせながら進行する群像劇をスムーズに見せる
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わが青春の輝き(1979年製作の映画)

3.9

‪フェミニスト映画のクラッシックにして傑作。
19世紀末オーストラリア、女は結婚して子を産むものと考えられた時代に文学と音楽を愛し、自由と孤独を選ぶ女。
変わり者と言われても茨の道が私の生きる道。
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若草の祈り(1970年製作の映画)

4.0

‪ロンドンからオークワースへ移り住むことになった母と3人の子供。
都市から村、家から家、人から人、鉄道を介して広がる善意の輪。
ヨークシャーの美しい風景を背に描かれる人々の交流に人間の良心や信じること
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Girl Asleep(原題)(2015年製作の映画)

3.5

上映前に新文芸坐の方が明るいデヴィッド・リンチと仰ってたけど、まさに!
踊り有り笑い有りで描かれる内気少女の心の旅。
並行世界、通過儀礼、避難場所。様々な位相を持つ森を抜けた先で待つ15歳の少女の変化
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クリシャ(2015年製作の映画)

3.7

酒も薬も恐いけど、げに恐ろしきは血縁の蟻地獄。
親族の集まりに特有の喧騒、打ち明け話、不安定な老女の神経を軋ませる不協和音。
自分が産んだ子が自分を異物のように見る苦痛。
とにかく主人公の面構えが恐い
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All This Panic(原題)(2017年製作の映画)

3.7

仲良しガールズの3年を追うドキュメンタリー。
高校卒業、進学、就職、わいわいパーティ、家庭の事情。
袂を分かったり再会したり、さっきまでは楽しくて今は不機嫌。
ブルックリンが世界の中心だった少女時代、
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キング・ジャック(原題)(2015年製作の映画)

3.5

“かさぶた”と呼ばれた少年が“キング”になるまで。
いじめられっ子の弟、暴力的な兄、年下の従兄弟。
誰かが誰かを殴って繋げる毒の男性性の鎖を断ち切るのは誰かへの想い。
‪『ゲティ家の身代金』『荒野にて
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ベルリン、アイラブユー(2018年製作の映画)

2.2

‪難民や東西の壁、カルチャーを取り込んだベルリン舞台のオムニバス。
各エピソードはさほどリンクせず、体感時間長め。
イワン・レオンとシベル・ケキリが出てて、ラムジーとシェイ…!と蚊の鳴くような声が出る
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宮本から君へ(2019年製作の映画)

3.9

負け犬で、情けなくて、自分自分自分、自分のことばっかり。
どいつもこいつもうるさいったらありゃしない。
皆んな敵、彼女すら敵。
でも愛するし、愛してほしい。
自分勝手で何が悪い。
生ききっちゃうんだ。
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パリに見出されたピアニスト(2018年製作の映画)

3.2

ピアノの才能を活かせずにいる青年と、彼に魅せられて猛烈アタックするオジさん教授、最初はツンなのに教えるうちにデレていくオバさん教授の三人四脚サクセスストーリー。
パリっていうよりオジさんとオバさんに見
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ラスト・オブ・モヒカン(1992年製作の映画)

3.5

少女時代、ダニエル・デイ=ルイスにハマった頃に観て以来の再鑑賞。
ロン毛で上半身はだけたセクシーダニエルがなんかめっちゃ走ってる印象しか残ってなかったけど、概ね間違ってない。
戦闘シーンでおフンドシが
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永遠の門 ゴッホの見た未来(2018年製作の映画)

3.9

‪ひまわりは揺れ、糸杉はうねり、太陽は燃える。まるでゴッホの心の中にいるような映像。
ウィレム・デフォーの青い目と深い皺が作る繊細な表情の変化はキャンバスで一筆一筆が振動する彼の絵画を思わせ、作品に強
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毒戦 BELIEVER(2017年製作の映画)

3.6

‪顔も声も素性も分からぬ麻薬王を追う潜入捜査に麻薬狂人大集合!
全員、癖が強い!
話つうじない!
視線を合わせたくない!
濃厚キャラバトルとハードな暴力描写、執念のマトリと組織に捨てられた男のスリリン
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イングリッシュマンinニューヨーク(1988年製作の映画)

2.5

イギリス人美術商がアメリカで巻き起こすドタバタコメディ。
観ながら、なんでだよ!ってツッコミが絶えない無茶な展開の連続だけど、全裸で怯え、ダンボール簀巻きでブロードウェイを走るダニエル・デイ=ルイスに
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サマ(2017年製作の映画)

4.5

めちゃ良かった。
植民地支配とお役人仕事の両義的不条理に、官能的でユニークな色彩と音の息遣い。
土地に留められる魚の話と重なる、何をしても願い届かず泥沼にはまる主人公。
悲惨な状況に寄り添う動物のユー
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サタンタンゴ(1994年製作の映画)

4.3

光と闇と雨が作る暗く美しい映像、圧巻の長回しと少ないカット、驚異的な音に包まれて、体と座席が溶け合った7時間18分。
長いと思いつつ、観ればこれが必要な長さに思えた、タンゴのステップで輪になる物語。
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マイ・ビューティフル・ランドレット(1985年製作の映画)

4.3

若年失業、移民排斥、右翼、人種差別、拝金主義、同性愛、女性の自立、サッチャー政権の英国に今の日本も重なる。
憎いけど愛する国、憎いけど愛する君。
新自由主義が吹き荒れて閉塞する社会で、パキスタン移民二
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メランコリーの妙薬(2008年製作の映画)

3.7

‪サンフランシスコのワンナイトスタンド。
街歩きで深まる二人の恋が、再開発と高級化、黒人人口の減少といった街の様相も照らし出す。
黒人男女の恋と文化的/社会的相違を語るマンブルコアと、ジェンキンス監督
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アス(2019年製作の映画)

3.8

B級でいるには予算があり、映像の企みは豊か。
そう来たら次はこう来るだろな〜って展開は越えないけど、己れと己れの殺し合い描写の執拗さになんか良さがある。
ルピタにロマンがありすぎる。
Hands Ac
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ブラインドスポッティング(2018年製作の映画)

4.1

‪オークランドの白人と黒人の幼馴染バディが変わる視点/変わらぬ盲点と向き合う3日間。
多様な人種と流入する富裕層で複雑化する差別構造、トキシックマスキュリニティが苦悩を生み、断絶と怒りを叫ぶ台詞はラ
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トールキン 旅のはじまり(2019年製作の映画)

3.4

‪波乱の少年期、学友や師、最愛の人との出会い、物語と言語の探求、そして第一次世界大戦。
作家トールキン誕生までの逸話の随所に著作の礎を見る。
四人の旅の仲間、木々のざわめき、戦争の傷、『指輪物語』『ホ
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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019年製作の映画)

3.4

タランティーノ流ハリウッド昔話as御伽噺。
デカプとブラピのコンビ感や、翳りゆくスターとシャロン・テート(ジェイ・セブリングも)への眼差しが温かい。
前半の60年代描写であれだけの引用を挿入しても展開
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エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ(2018年製作の映画)

4.2

ネットは話せても現実は無口。
中学は終わり、でもまだ何者でもない。
友達もいない。
誰もが輝いて見える現代で苦しむSNSネイティヴ世代の内気女子の自己受容を、懐古も蔑視も憐憫も無く、青春映画のクリシェ
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