完璧なクローン技術を購入して、死期の近い自分の代わりに生活をさせて家族を安心させる。
その行為が果たして誠実と言えるかどうかは微妙なところで、そんな最先端技術が開発されたらかなり大きなニュースになっているだろうし、長期間調子が悪そうだった人がある日急に元気になって帰ってきたらクローン疑惑をかけられて家族関係が破綻しそう。あと、"クローン元"の人権についての法整備が追い付いてなさそうなのが結構心配。会社の人間がクローンのオリジナルに犯罪行為をしても法律で裁けるのかな？それこそ被害者無き殺人も引き起こる可能性はある。
ここら辺の設定には一部無理もある気がするけど、近未来のことをあれこれ言うのは野暮な気も……。
設定の話はともかく、一人二役を行うマハーシャラ・アリの名演によって二人の人格がまるで異なるように感じられるくらいの重厚感とある程度の説得力がドラマ部分にはある。今日にでも心臓発作が起きて死ぬかもしれないオリジナルと、病気の心配がないクローン（通称ジャック）では見える世界も違うのだろう。
もう一人の自分に対する憎しみも分かるし、逆に負い目も分かる。
上述した世界観設定の少々荒い点は気になるものの、俳優の演技がしっかりしていれば何となく感動ドラマっぽく見えるという好例を体験したい人にはおすすめ……。
マハーシャラ・アリは『ムーンライト』での存在感が強すぎて、他の出演作を観る前には勝手にハードルを上げて期待を上回らないことがままあるね……。
