眼鏡の錬金術師

さかなのこの眼鏡の錬金術師のネタバレレビュー・内容・結末

さかなのこ(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

沖田修一監督の。同氏の作品はほとんど見ていて、最近はあんまり振るわないなと思ってたが、この作品は良かった。横道世之介をやや彷彿とさせる作りにもなっていて楽しめた。

物語は大きく分けて①小学生時代、②高校生時代、③社会人時代という風に時折年代ジャンプしながら進んでいく。

元々魚が大好きでちょっと変わった子どものミー坊。小学生時代にギョギョおじさんと出会い、魚研究に打ち込んでいく。
高校時代の不良とのやり取りがめっちゃおもろかった。全然会話が成立しなくて、調子を狂わせられる総長がかわいかった。籾山のシースルーインナーを網にしてイカを捕獲するのもおもしろい。
社会人編では、仕事がうまくいかない描写と、小学時代や高校時代に出会った友人たちと再会していき、ミー坊に救われる描写が続く。この再会場面は横道世之介の未来場面と少し似ている。特にヒヨの彼女とのディナーシーンが良かったね。なんでディナーにミー坊を呼んだのかよくわからんが、ヒヨめっちゃいいやつだった。

これは実話を元にしてるのだろうか?だとすればさかなクンはこの前までやってた朝ドラの万太郎と近く、一般的な仕事をする能力は低いが、研究する能力はすこぶる高いという性質を持っていることが分かる。
その尖った能力を社会に見つけられたから良いけど、もし見つけられなかったら、仕事ができないただの社会不適合者というレッテルを貼られ兼ねないかもな、と。
現代社会の評価軸として、勉強ができるかどうか、仕事ができるかどうか、お金が稼げるかどうか、みたいなところばかりに着目しがちなのは良くないことなんだよなと思う。仕事はできないけど、魚めっちゃ詳しいとか、そういう評価軸を持っておくことが大事だよなって思った。

悪いやつが一人も出てこない、優しい世界。笑いあり、切なさありの沖田監督らしさが発揮された良作。