HAYATO

野いちごのHAYATOのレビュー・感想・評価

野いちご(1957年製作の映画)
3.9
2024年171本目
老教授の胸に去来する思い
スウェーデンの巨匠・イングマール・ベルイマン監督の傑作ロードムービー
孤独な老人の1日を、夢と現実、過去と現在を行き来しながら詩情豊かに描く。
医学界での長年の功績を認められ、大学から名誉博士号を授与されることになった教授・イーサク。自らの死を暗示する悪夢にうなされ、寝覚めの悪い朝を迎えた授与式の当日、彼は息子の妻・マリアンと共に車でルンドへ向かうのだが…。
『夏の夜は三たび微笑む』、『第七の封印』の成功で国際的な名声を得たベルイマンが映画製作会社から全面的なバックアップを得て製作した作品。第8回ベルリン国際映画祭金熊賞、ゴールデングローブ賞外国語映画賞、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞外国語映画賞など多くの映画賞を受賞、批評家からの絶賛を浴び、ベルイマンの代表作として高く評価されている。スタンリー・キューブリックが影響を受けた映画としても有名。
老教授を演じるのはサイレント期の名監督であり、「スウェーデン映画の父」と称されるビクトル・シェストレム。撮影当時78歳と高齢で健康に優れず、多くの困難があったものの、シェストレムの演技は広く賞賛された。彼にとって本作が遺作となった。
共演に、『第七の封印』のビビ・アンデショーン、『地獄に堕ちた勇者ども』のイングリッド・チューリン、『仮面/ペルソナ』のグンナール・ビョルンストランドなど。
イーサクが見る夢の描写はかなりインパクトがあり、「死」を想起させる恐ろしい描写が満載。針のない時計、デスマスクのような異型の男、無人の馬車、棺から手を伸ばす自分の姿など、不安にさせる要素が詰まっていた。こんな夢は見たくない。
孤独な老人の死をテーマにした悲しい映画のようで、実は心温まるタッチであったのが意外なところ。青春時代の眩しさと甘酸っぱい思い出を懐古する瞬間が、優しく、そして美しく映し出されていた。
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