ハヤシ

そばかすのハヤシのネタバレレビュー・内容・結末

そばかす(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

自分だけじゃないと思わせてくれるような相手に出会うラストは間違いなく希望だ。では「自分だけじゃないと思わせてくれる相手」が「分かり合える相手」なのか、それはまだ分からない。

分かり合うってたぶん本当に難しい。わたしが「分かり合えた!」と思ったそれのうち、どれぐらいが「実はただ相手が口も心も閉ざしてわたしの作った型に押し込められてくれただけ」なんだろう。本当に完璧に分かり合える相手なんて何人いるだろう?そもそもいるだろうか?

でもマジョリティの側面が多いわたしは、自分を出すことによって相手を永遠に失うということには大抵の場合はならない。大人になってからは特にそうだ。目を瞑ってもらっていることはきっと多々あるだろうが。それはわたしのプロフィール帳の最初の部分(性自認、セクシュアリティ、人種、国籍…)が、多くの人が「それを聞いたところで特に何も感じない」と考える範囲の中にあることに依るところも大きいだろう。

だからマイノリティの側面が多い人に比べて、きっと確実にハードルは少ない。この映画でそのことを本当によく教えられた。

シスヘテロのわたしは身勝手にも、あのラストをほんの少し寂しく思いもする。セクシュアリティが違っても分かり合えると信じたくて。でも分かり合えた相手が恋愛を優先した結果、置いていかれる形になるというのがあるあるなんだろうなとも分かる。その寂しさを表現することこそが大切だったのだ。わたしの感じた寂しさに配慮することよりも、もっと大切でやるべきことをやっているのだと思うのでそれで良いというか、本当にそれが良い。わたしの気持ちよりも佳純の気持ちに寄り添った映画であってくれて良かった。佳純を主人公にした映画ができたということを心から祝福したい。
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