jam

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4.0
人は決してひとりでは生きてはいけない

この世に生まれてから(いや、生まれる前から)様々な人の手を借りて育ち
身体も大きくなり、世の中に出て
お金を稼いで自立したとしても
日々、誰かに接して
誰かの力の世話になり

そうして生きている

当たり前のこんなことを
思い出し、深く考える
この映画を観ながらじっと


一番身近で 一番厄介な家族
とりわけきょうだいには憎しみと愛情が混在する


遥風が家を出なければならなかった過去のこと
それから彼女がどれほどの努力を重ねて今の自分を確立したのかは、想像するしかないけれど
登場から己を貫く彼女の言動に眉を顰めたのは事実

確かに彼女の意見は的確だけれど
相手の状況や気持ちを思いやる点が足りないまま突き進む

各々問題を抱えた兄姉は振り回され
苛つくその心の中がスクリーン越しに透けて見える


建て増しつぎはぎ、ペンキのかすれた看板の
お店
見慣れたヤマザキパンの商品棚に差し込む夕陽
それでも
ここを頼りにやって来る人がいる

そのお店を処分するのか
限界まで頑張るのか
結末は…

「その先の言葉を私は考えていた」

数年ぶりに改めてきょうだいと向き合ったことが
遥風のなかに僅かな変化を


真夏の昼下がり
実家の素麺を思い出す。
jam

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