わたりかもめ

aftersun/アフターサンのわたりかもめのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
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どうしてか分からないけれど最後は涙が出てきた。
同じホテルで彼らを見かけた滞在者のような心地で観た気分。
父が何を抱えていたのか。
その後のソフィは考えたり、責めたりしていたのだろうけれど、
もし同じ状況に陥れば誰しもが同じ様になると思う。
父は気づかれないようにしていたのだろうから。
ただ確かだと言えることは
彼は娘のことが大切で愛していたということ。
踊るシーンで歌詞が表示された曲は知っていたものの、歌詞を知らず心が鷲掴みされた。
最初は繊細な紙細工の印象だったけれど、進むに連れて真っ白な布をどぼんと染液へ投げ入れる染め物みたいに思えてきた。
その布が何を意図して模様を入れられめいるか分からないけれど、綺麗だな、って思うものになっていると確信が持てる。

極端な言い方をすれば何も起きず、何の救いもない、
彼らの人生の一端に触れただけの作品。
でも観客だからこそ観ることが出来た風景や、
感じ取れたくしゃくしゃとしたもの、息苦しくなるほどの苦味や痛みをちゃんと受け取って生きていきたいと思えた。
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