T太郎

M3GAN/ミーガンのT太郎のレビュー・感想・評価

M3GAN/ミーガン(2023年製作の映画)
3.8
976
「チャイルドプレイ」の少女版といったところか。
オモチャの人形が殺人鬼と化し、殺戮を繰り広げるという物語だ。

ただし、こちらは霊ではなく人工知能である。
人形というよりロボットだ。

更にその造形が素晴らしい。
リアルはリアルなのだが、非常に別嬪さんなのだ。
”アナベル“とはえらい違いなのである。

誰かモデルがいるのだろうか。
私はエリザベス・オルセンに似ているように感じたのだが、どうだろう。

そう、それがミーガンちゃんなのである。

ミーガンちゃんは一人の少女の心を鷲づかみにし、まんまとその家庭に入り込む。

初期はまだ恐くない。
真面目なミーガンちゃんだ。
言動は大人びていて、ちびっ子のオモチャとは言いがたいが、少女にはなくてはならない存在になっていく。

だが、お察しのとおり、ミーガンちゃんは凶暴化していくのだ。
ちっちゃい見た目に騙されてはいけない。
ロボットなので腕力も相当強いのである。

見た目が可愛らしいだけに恐ろしい。
ひとしきり変なダンスを踊った後に襲いくるリアルな美少女ドール。
なんという不条理で倒錯的な恐怖であろうか。

私が待っていた人形ホラーはこれなのだ。
チャッキーやアナベルのような、いかにも恐ろしげな顔面は逆に恐ろしくないのだ。

これは現実世界でも当てはまる話だ。
強面の人間はさほど恐くない。
端正で優しげなハンサム男の方が、実は恐ろしいのだ。
世の女性たちにはハンサム男に十分気をつけるよう、ご忠告申し上げる。

ちなみに私は、端正のかけらもないゴツゴツとした岩のように恐ろしげな非ハンサム男である。
花崗岩のような存在なのだ。
どうか、ご安心してアプローチ願いたい。

おっと、珍しく話が脇道に逸れたようだ。
(毎度の事やで)
あとは世の女性たちの良心にお任せするとして、ミーガンちゃんについて今少し申し述べたい。

特典映像を見る限り、なんとCGは使っていないらしいのだ。
アニマトロにクスという技術や、実際に俳優が演じたりして、あの複雑なミーガンちゃんを生み出したというのだ。

実に素晴らしい試みだと言える。
CGなど無くとも、リアルな恐怖を表現できるのだ。

ハリウッドのホラーは、やたらと異形のクリーチャーを登場させがちだ。
あれは、全く恐くない。
作り物感が透けて見えてしまい、私の心は寒冷前線のように、あるいは日本の景気のように急速に冷え込むのである。

その点、このミーガンちゃんの造形は秀逸だと言える。
終始、目が綺麗なのだ。
最後、顔面を蹂躙され傷だらけになりながらも尚、目だけは綺麗なのである。

そして、それが妙に不気味で気持ち悪いのだ。
ロボットなので作り物なのだが、目だけリアルで生命力があるという気色悪さ。

自我に目覚めた人工知能の恐怖というテーマ性はやや薄いが、もはやどうでもいい。
ミーガンちゃんの造形だけでも十分見応えありなのである。
T太郎

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