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君たちはどう生きるかのASAのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
2.9
母への強烈な想いが眞人の動きに反映された冒頭のシーンでいきなり心を鷲掴みにされた。幼くして大きなトラウマを抱え悪夢に苛まれる姿に共感を抱き、心を動かされた。だが、本作で一番感動したのは序盤のそこだった。眞人があっちの世界に入り込んでからは物語の展開が明後日の方向に加速。振り落とされまいと努力したものの、そのスピードは上がる一方。終盤は眞人を遠くから眺めていた。ストーリーが意味不明なので眞人の心情の変化を理解できず、感情移入もできなかった。
宮崎駿がこの作品で言いたいことはぼんやり伝わったような気はする。が、本作で一番印象に残ったことは印象的なセリフの中身とかではなくて、説教くささ。終盤でその世界の神的なキャラに自身の想いをだいぶしゃべらせていたようで冷めてしまった。タイトルからして説教くさいが、中身はそれ以上に感じた。
ジブリ特有の水彩画のような優しくて美しい風景にはあいかわらず引き込まれる。青空の下で風になびく草原のカットは至高。ファンタジーの独特な世界観よりもむしろ、現実世界に近いショットが幻想的で心に刺さった。
広告も情報もいっさい出さず話題になり、私自身も全く情報を入れずに鑑賞まで漕ぎつけられた。それだけに超現実的な世界からファンタジーへの転換に驚いたし、ついていけなかったのかもしれない。だが、難解で理解が難しい物語でも面白い作品はある中で、『君たちはどう生きるか』は面白くなかった。身勝手な消費者にすぎない私は「もう一本観たい!」と宮崎駿に強く願う。
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