YukiSano

岸辺露伴 ルーヴルへ行くのYukiSanoのレビュー・感想・評価

岸辺露伴 ルーヴルへ行く(2023年製作の映画)
3.8
岸辺露伴という稀有なキャラを実写化して成功した奇跡のTVドラマシリーズの映画化。

ジョジョ原作の中でも1番実写化しにくそうなキャラで実際、本編の実写化にも出てこなかった岸辺露伴を高橋一生の演技力だけで乗り越えたという奇跡。

もちろん荒木飛呂彦の世界観の再現や、歪んだ日常への入口など演出面もフィットし、小林靖子の大胆なアレンジも実写という重力の中で最大限原作の持ち味を拡張していた。

ただし、それはドラマとしての表現だから。

今回の映画版でもスケールアップしたサスペンスと象徴的な「黒い絵」というパワーアイテムなど映画化に相応しいアイテムは揃っていた。

しかし、こと映画表現として見た時に感じる若干のツメの甘さが少し露呈してきた。説明ゼリフと強引なキャラ設定、狙いが絞りきれないメタファーが惜しい。そう映画として観ると物足りないのだ。

だが、これをスペシャルドラマ特番として見たら最高に面白いのだ。この差異は家で配信で見たから生まれたものではなく、単純な映画的手法の欠如から来るものだと確信している。伏線回収の仕方や大胆な回想シーンなど面白さは十分詰まっているのだが、ここまで練り込まれているなら後一押し欲しかったのも本音。まぁ映画としてではなく、あくまでドラマならば気にならないという側面が、日本映画の演出面の課題を象徴している。

究極の黒を求めるならば、この作品もまたお行儀を捨てて、狂気にダイブするかのような映画になれば大傑作となったはず。次回に再チャレンジしていただきたい。

そして主演のお二人はご結婚おめでとうございます。この作品のバディ感が大好きなのでいつまでも夫婦で共演し続けて欲しいですね。
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