しちみ

ステルスのしちみのレビュー・感想・評価

ステルス(2015年製作の映画)
4.0
これは本当に良い作品。
多様性や受容、世の中のことをまだ把握しきれてない子供たちのコミュニティで自分のセクシャリティーと向き合うことはとても大変だし、常に恐怖と苦痛に向き合わなければならないと思う。

正直、胸が張り裂けそうになるくらいキツいシーンもあったけど、母親がとても素晴らしく理解のある人だったからそれが救いだった。母親の心配をよそに娘が恐怖に打ち勝って相手のことを信じてみようと思えるのも母親が娘のことを大切だ、あなたはあなたのままで良いんだよと一生懸命に伝え続けてきたからだと思う。
お泊まり会での結末はあまりにも残酷だったし、怖い顔をして追いかけてきた彼女の父親は一体何をするつもりだったんだろうか…本人に向かって罵倒でもするつもりだったのか…。

娘を守ってると叫ばれたけど間髪入れずに私も娘を守っている、同じだ!!と堂々と反論し、娘を守り切った母親は強い。事前に向こうの親には伝えた方が…っていう気持ちも分からないこともないけど、個人的にはそれもアウティングの一種だと思う。子供だからは関係ないんじゃないかなって。母親は娘のことを尊重してるからこそあえて言わなかったんじゃないかなって。
まあ、相手側の父親の気持ちも全く分からない!ってわけじゃないんだけどね。だから本当複雑な問題だよね。

人間には人それぞれ価値観があるからこういうセクシャリティーの問題を全く受け入れられない人もいるんだろうけど、それも間違ってるわけではないと思う。価値観だからね、人それぞれの。
でも、だからと言って受け入れられないから相手のことを傷付けたり批判したりすることはお門違い。今回の件みたいに勝手にアウティングするのなんてもってのほか。自分には受け入れられないと思ったなら、あなたはあなたのままで良いし何も悪くない、けど私には受け入れられないな…でそっと離れれば良い。

現実ではこういう救いは起きないのかもしれないけれど、本作の最後には勇気を出して本当のことを伝えた彼女はたくさんのものを失ったかもしれないが、かけがえのない一つのものを手に入れた描写もあり、良い塩梅だった。
教材として使えるんじゃないかと思うくらい良い作品だったなぁ。
世界中の人が自分らしく幸せに生きられると良いな。
しちみ

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