タケイ

キリエのうたのタケイのネタバレレビュー・内容・結末

キリエのうた(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

アイナ・ジ・エンド氏演じるKyrieの歌については現状、適切な感想を記せるだけの語彙がないので、ストーリー・映像面からの所感のみ記録。

キービジュで広瀬すずの顔を見、逸子すこり要員として劇場へ行ったから彼女の結末ががちで悲しい。女を武器に生きるのが嫌で家を出たのに、パトロンに裏切られ、結局男を騙して東京で生き残り、友達まで巻き込んで、最終的に住むとこ無くなって刺されて終わるって、ねえ! 夜のビジホで独り何考えてたんだろうと思うと、ああ。髪色もハイブランドコートもさっぱりした声や性格もすごいよかったのに、これが詐欺生活の中で培われたものだったっていうのが、いや嘘だったっていうんじゃなくて真緒里の人生そのものがなんか、浅いのが、切ない。路花のことめっちゃ振り回してたけど逸子的には大切な友達なんだよな。あーーてか、騙してた男たちのことも本気で愛してたつもりだったらどうしよう。母親の接客姿を真似ることで愛を学んだつもりになってたら?あーーー!!

……夏彦のことでも書くか。夏彦……いやクズとも言い切れず可哀想っていうのでもなく、そう、懺悔ってこういう魂のためにあるよな。キリスト教で神が目に見えない設定なのって、赦しを乞うのを止めることが人間にできないからなんだろうな。路花に縋る夏彦の姿はこの映画の中で一つの極点だった。お前は悪くない……ことはない!お前は悪い! 避妊すべきだったし、希のこと好きじゃないんだったら告白断るべきだったし、付き合うならずっと愛するべきだった。だったけど、だけど、こうなっちゃったんだよな。このずるずるいっちゃう感じ、あるよな。希行方不明についての気持ちもすごいリアル。

地震と津波のシーンに監督の問題に対する真摯さを感じた。ちょい前に見た震災映画『やがて海へと届く』では津波シーンをパラパラ漫画風にして静謐な雰囲気を出していた、換言すれば衝撃をナーフしていたのに対し、本作は海を上空から映した画で事態のでかさをしっかり表現する。ただその中で煽情的な要素は徹底的に排除しており、ある意味敬虔なキリスト者のような、作品としての謙虚な態度を見せた。レクイエムとしても用いられる“キリエ”を冠するタイトルや、全体のテーマ――生きていく中で蓄積される罪や記憶の発露(個人の感想です)――と、理想的に調和した素晴らしい映像。

あとは幕張や新宿や新木場の知ってる場所がいっぱい出てきて嬉しかった。

楽曲についてはもうしばらく、言葉が温まるのを待とうと思う。(あと2周くらいしてから配信を聴くつもり。)

はあ、生きることはままならない。
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