ベン家の帯

PERFECT DAYSのベン家の帯のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
5.0
生涯ベストムービー。
音楽が最高。映像が最高。
純文学を読んでいるような心地良さ。

人生の浮き沈みを経てあらゆるものを削ぎ落とした先に辿り着く境地。
垣間見える本当は削ぎ落としたくなかったもの。
これで良かったのか?これで良いんだ。
時々分からなくなるが、日々を噛み締めながら生きていく。

自分は映画と音楽と本が好きだ。
時々、金なんか無くても図書館とサブスクがあれば最低限の暮らしでも幸せなんじゃないかと思うことがある。
でも、それは安定した生活基盤に立って見る人生の選択肢の一つだ。
選択肢がない状態ではそう思えないんじゃないかと思う。
平山も選択可能な側から辿り着いた人間だと思われる。
そんなことを考えると、「こんな風に生きていけたなら」と素直に思えないところがある。

【サウンドトラック(朝の車①)】
アニマルズ / The House of the Rising Sun(朝日のあたる家)(1964年)
父親がろくでなしだったせいで少年時代は苦労した男が歳をとってもなお、その呪縛から逃れられない苦悩を歌う。父親との確執を匂わせる。
https://www.shazam.com/track/333457/the-house-of-the-rising-sun?referrer=share

【サウンドトラック】
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド / Pale Blue Eyes (1969年)
「linger on your pale blue eyes(あなたの淡く青い眼が忘れなれない。)」と歌う既婚女性との失恋の歌。ボーカルのルーリードは1970年にバンドを脱退し1972年にperfect day をリリース。
平山にとっての”あなた”はだれなのか?
https://www.shazam.com/track/258716/pale-blue-eyes?referrer=share


【サウンドトラック(朝の車②)】
オーティス・レディング / (Sittin' on) The Dock of the Bay (1968年)
歌詞の要約→「生きる意味が見出せず田舎を捨てて都会に出てきたけれど、何も変わらない。朝陽が上ってから陽が沈むまで入江に佇み、潮の満ち引きや船の出入りをただ見てるだけ。どうしてみんなが出来ることが自分にはできないんだろう。これから先もこうなんだろうな。」
平山の不器用な人間性が垣間見える曲。
https://www.shazam.com/track/11209307/sittin-on-the-dock-of-the-bay-2020-remaster?referrer=share

【サウンドトラック】
パティ・スミス / Redondo Beach(1975年)
柄本時生の彼女が平山の車で聞いて気にいる曲。
楽しげな曲だけど、別れの歌。「どうしてあなたは去ってしまったの?」と歌う。
https://www.shazam.com/track/274478/redondo-beach?referrer=share

【サウンドトラック】
金延幸子 / 青い魚 (1972年)
「青い海も、青い魚も。みんな昔手にしたもの。 今、私の手のひらの中を冷たい風だけが通り抜けてゆく」から始まるこの歌。平山はかつては立派な家や仕事があって家族もいたのではないかと考えられる。初めて聴いたけど、めちゃくちゃカッコいい曲。
https://www.shazam.com/track/41028661/%25E9%259D%2592%25E3%2581%2584%25E9%25AD%259A?referrer=share

【サウンドトラック】
ルー・リード / Perfect Day(1972年)
映画「Trainspotting」のサントラで何度も聞いたせいでヘロイン中毒者のイメージが強い。「君といるととても幸せなんだ。」という歌詞なんだけど、自分のことを“生きる価値のない人間”だと思っているような歌詞で辛い。平山に一体なにがあったのか?
https://www.shazam.com/track/11227494/perfect-day?referrer=share

【サウンドトラック】
ザ・キンクス / Sunny Afternoon(1966年)
税務署に全てを取り上げられて恋人も去ってしまった男が「この搾取から俺を救ってくれ」と歌う。
https://www.shazam.com/track/484829/sunny-afternoon?referrer=share

【サウンドトラック】
浅川マキ / 朝日樓(朝日のあたる家)(1972年)
最初に流れたhouse of the rising sunの日本語カバーを小料理屋の女将が歌う演出に痺れた。
愛する男が自分の元に帰らず、流れ流れて娼館に落ちた女の悲哀の歌。アニマルズのカバーとは歌詞の意味合いが異なる。
https://www.shazam.com/track/157960318/the-house-of-the-rising-sun-1971-live-at-kinokuniya-hall?referrer=share

【サウンドトラック(朝の車③)】
ヴァン・モリソン / Brown Eyed Girl (1967年)
ニコと一緒に仕事に向かうシーン。
歌詞の要約→「自分の道を見つけるのは難しい。誰も助けてはくれない。時々、あの頃に戻れたらいいのにと思ってしまう。」
https://www.shazam.com/track/370670/brown-eyed-girl?referrer=share

【サウンドトラック(朝の車④)】
ニーナ・シモン / Feeling Good (1965年)
「新しい夜明け。新しい1日。新しい人生が今始まる。最高の気分。」「私は自由だ!生きててよかった!」みたいな歌。この映画のラストの意味が理解できずに朝陽を眺めながらこの曲を繰り返し聞いてみたら、生きることの尊さ、人生の儚さ、美しさ、全てに感謝したくなるような気持ちが湧いてきたけど、平山の気持ちがそうだったのか分からずにいる。
https://www.shazam.com/track/88153164/feeling-good?referrer=share

【小説メモ】
「野生の棕櫚」ウィリアムフォークナー
「木」幸田文
「11の物語」パトリシアハイスミス
あんな古本屋いいなぁ。
ハイスミスから不安と恐怖の違いを学んだっていうセリフとか最高。
映画の中盤まで平山はミヒャエル•エンデの「モモ」に出てくる道路掃除夫ベッポみたいだなと思いながら見てた。