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落下の解剖学のmimagordonのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.8
素晴らしい。そして、恐ろしい。

我々が見ている「事実」は本当に事実なのだろうか?ある一つの事実の「真相」を解明する過程で重なる推測と仮定。誰がどこまで事実を語っているのか。そもそも事実を見ることなど人間にはできないのだろうか?誰かの視点から物事を見るとき、客観視などあり得ない話なのか?法廷ドラマで判決に向かうまでの映画で、ここまで深く疑わせてくる映画を私は他に観たことがない。事故、或いは事件は解決に向かうはずでは?法廷で「事実」が明らかになり、判決が下り正義がなされるものでは?「法律は友達じゃない」。息詰まる152分間で、映画は我々が普段当たり前だと思っていることを明るみに出していく。時代の価値観が大きく変革している今だからこそ、もう一度自分の思う「事実」に目を向けなければならない。何故ならば、恐らく私を含め多くの人が最もわかった気になっていることだからだ。サスペンス的カタルシスが一切ないからこそ、普段は見過ごしがちな人間の内面が露わになる。解剖されていく身体のように。傑作。
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