たけちゃん

乱れるのたけちゃんのレビュー・感想・評価

乱れる(1964年製作の映画)
4.3
スーパーマーケットの進出でかつての賑わいを失った商店街。夫に先立たれ、嫁ぎ先の酒屋を一人で切り盛りしていた主人公は義理の弟に思いを告白され、居場所を失っていく。
恥ずかしながら、ほとんど観た事がなかったのですが、日本の4大監督とも呼ばれる成瀬巳喜男監督
義理の姉弟という社会的なモラルに拒絶された男女を、脚本のセリフを極限まで削り、抑制された禁欲的なカメラワークで描く後半の場面は監督の真骨頂です。こころを締め付けられました。そして最後の高峰秀子の演技も圧巻でした。

■参考メモ
映像作品に対するこだわり
女性映画の名手として知られる成瀬は、女性の魅力を引き出すことに長けていたとされる。日本映画黄金期の女優たちの好演を成瀬作品で多く見ることができる。美術に中古、撮影に玉井正夫、照明に石井長四郎、録音に下永尚、音楽に斉藤一郎といった通称「成瀬組」と呼ばれるチームによって成瀬の作品は作られている。チームの作り出す独特の映像美はいまだに高い評価を受けている。また、成瀬の作品の特徴として「目線の芸」が挙げられる。これは人物の目線の動きで心理描写やストーリー展開をする独特な手法であり、映画監督の小津安二郎、黒澤明らも認める成瀬独自の手法であった。会話シーンなど日常シーンが多い中でいかに動きを見せるのかを考えた結果誕生した手法ともいわれる。その他にサイレント映画出身の成瀬は言葉ではなく、動きで内容を伝えるということにこだわりがあったともいわれている。また、作品の中に時代性や当時の世相を織り込んでいくことも多かった。これは物語にドキュメンタリー性を持たせる効果があると同時に、『映画の寿命は映画館で上映される数週間だけのものである』という、成瀬自身の考えによるものといわれている。また、黒澤明や石井輝男など、のちの日本映画界を支える多くの映画監督が、成瀬の元で修行し助監督を務めたことでも有名である。
*映像制作・動画制作会社のボーダーレス(東京)より抜粋