ダンクシー

哀れなるものたちのダンクシーのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.9
評判通り凄かったな〜。セックス!!セックス!!セックス!!って感じです。
あまりにも常軌を逸している。とんでもないものを観た。衝撃です、はい。不協和音イイネー。

自殺後、自身が孕んでいた胎児の脳を移植された女、ベラ。成人女性の身体に赤ちゃんの脳みそ、勿論精神年齢と肉体年齢は全く比例していない。しかし、物凄く早いスピードで物事を覚え成長していく。生まれた時から縛られる社会のルールや規律から、何もかもから解放されて自分の好きなように自由でいられるなら、どうなるのか。それを描いたのがこの映画。ベラという一人の実験体の成長記録を、我々も覗いているという構造だ(魚眼レンズはその効果なのかな)。そして、医者のゴドウィンの家には頭と胴体が異なる見るも奇怪な動物たちがウヨウヨといる。違和感しかないが、キモくて面白い。

世の中、自分を含めほとんどの人間が無自覚のうちに、育った環境や人間関係、そしてそれらを内包する常識や倫理観にのみ込まれ支配されている。それを踏まえると初期のベラは明らかに唯一無二の存在だった。彼女だけが何にも縛られていない。しかし、冒険するにつれ、多くを知るにつれてこの世界がいかに腐っているのかを知る。資本主義、貧困、不平等、差別、etc…。
ベラは女。女性の身体を持つ彼女にとって、いかに女性が搾取される世の中かを身に染みて感じた事だろう。ただし、成長したベラには性行為の決定権や自由意志が強くあったのには注目したい。数々の悲惨な現実を見てなお彼女が選んだ選択なのだから。哀れなるものたちは、女性の性的自由が強く描かれたフェミニズム映画とも言える。
正直、ワクワクした冒険の行先が、セックスで終わってしまうというのもなんだかとは思ったし結局人間にとって"性欲"に勝るものはないのだなと皮肉にも感じた。しかし、これは俺自身が持つ"娼婦=可哀想"という、男が優位に立っているのだという無自覚な先入観や偏見がもたらすものであるのだと自省。
女性が自ら望んでやっている事を勝手に蔑んではいけない。その通りだ。うん、いや、でも、さすがに男の客キモすぎたけどな??笑 あれはさすがに同情もしちゃいますよ。。タマキンぶらさげて何してんだか…って酷すぎて笑っちゃったよ。

ゴドウィンもマッキャンドルスもウェダバーンも、メインの男の登場人物は全員ベラを弱い生き物で、掌の上で支配できると思い込んでいたのだが、皮肉にも、気づけば自由奔放なベラに振り回され彼女を心から求めてしまっており、欲している。逆にベラに縛られて支配されきっている。ゴドウィンは、旅立ったベラの代わりに新しい人造人間を作るが、ベラで失敗した常に支配する目的を達成するために特別な感情を抱かず冷めた対応をする。愛し愛されたいのにも、だ。ウェダバーンは完全に狂ってしまった。自身が上に立って支配出来ていると思い込んでいたのに何でも知ってるように見せていたのに、全て見透かされる。それでもベラを求めて破滅する。
女性を守るべきもの・弱いものと下に見ている男性の無自覚な意識が、痛烈にカウンターパンチされ砕け散っていく。いや〜中々痛快でしたねぇ。


ただ、舞台が変わる事にカットに挟まれる謎映像の数々は本当になんだったんだ!?あれ重要な要素なのかなとか意味あるかなとか勘繰ったけどそんなこと無かったぽいですね…。それと、将軍でてからのストーリー雑じゃない?テンポ早すぎるしもっとじっくり描いた方が良かったんじゃないかな。
でもオチはズルすぎた、大爆笑してしまった。最高だったな〜、やっぱ頭おかしいよ。。
ダンクシー

ダンクシー