ダンクシー

アウトレイジ 最終章のダンクシーのレビュー・感想・評価

アウトレイジ 最終章(2017年製作の映画)
3.8
「迷惑もハローワークもあるかいボケ!」

シリーズ完結作。孤独のグルメ感を否めない松重豊。本作は、前々作と前作を観てないとちゃんと楽しめない作品だ。正直、1と2と比べるとストーリー等見劣りしてしまうが、北野武らしい終わり方だったと思う。

最終章は、ストーリーを追うことも勿論必要ですが、それ以上に大友が悪に塗れた汚い世界で何度もがき足掻き、葛藤してきたのかを感じる事が大事。大友の生き様を感じ取らない事には、楽しむことも意図を理解することも不可能だろう。
1では嫌になるほど汚い世界で悪に振り回され、ビヨンドでは利用されながらも俯瞰的な立場で悪縁を断ち、最終章では再び悪だらけの汚い世界に足を踏み入れる。義理人情のため、ケジメをつけるため。
1、2では"小さい組織が、大きい組織の中でどう生きるか・大きい組織を相手にどう立ち向かうか"がテーマとしてあったのだが、3は組織間の問題もあるのですがそれよりもメインとして"個々がどう生きてケジメをつけるか"というラストに相応しいテーマになっていた。
殺し方大喜利になっているアウトレイジシリーズですが、最終章も素晴らしかった。花田の性癖を利用したゾクゾクするおぞましい爆殺も、会長の生き埋めにして轢くとかいう最悪すぎる殺し方も、最高だったな〜!

「人聞きの悪いこと言わんといて下さい。それじゃまるで私が最初から会長に付いていたみたいやないですか」

過去作のように北野武らしいかと言われると、らしいのは部分的だが、北野武じゃないと描けなかった作品だとは断言できる。シュールなユーモアは健在だが、それも芸人の北野武の悪意のあるブラックな笑いが過去作よりも分かりやすく出ていたと思う。
北野武と大森南朋がマシンガンをぶっぱなすシーンが個人的に最も印象に残った(面白いのは勿論あそこまで容赦なくやられると爽快感とカタルシスを感じた)が、この場面の2人は黙々と無表情のまま撃ちまくっていた。これは義理のために動くヤクザがいかに機械的に執行しているかを表現出来ている。というかその会合の名前も"河野直樹くんを励ます会"なのがさすがに面白すぎたから反則。名前からずるいもの。

「おどれがこの中田と組んで、ワシのタマ取ろうとしたやろ。中田くんがねぇ、ぜ~んぶ教えてくれたんやでぇ」
「親に向かってなんだその口のきき方は!」
「親も子もあるかいアホンダラ!」

ただ、ビヨンドまでの因縁のケジメが多いので、あまりワクワク感がないというか、目新しさや独自性の盛り上がりには欠けている。勿論ピエール瀧演じる花田が新たに因縁を作って物語が動き出すのだが、それもあまりにも弱い。無理矢理感は否めない。前作、前々作と比べてもストーリーのテンポが悪い。序盤の展開で一気に盛り上がって話がテンポよく動き出してどんどん盛り上がりが増していく感じがあったけど、最終章はそれが遅い&そこそこだった。魚釣りのシーンも特に必要とも良いとも思わなかったから、間延びでしかない。それと、散々憎たらしい事を積み重ねてきたド悪党たちが立場が逆転し殺されるあのカタルシスが、どうしても最終章では薄かった。これは、互いの組織が穏便に済まそうとしていた+花菱の内部抗争に巻き込まれる構造になっていたからだろう。

でも、最終章を観ずしてアウトレイジは語れないし、観ないと気持ち良く終われない。それとちゃんと面白かったし、北野武に対するリスペクトが更に増した。やはり大好きな監督です。
ダンクシー

ダンクシー