ダンクシー

フォーリング・ダウンのダンクシーのレビュー・感想・評価

フォーリング・ダウン(1993年製作の映画)
4.2
「警察無線でバーガー屋での一件を聞いた。スカッとしたぜ。CMじゃ店に白人の子供たちがいるのに実際に行くと黒人どもでいっぱいだ。おれたちの食い物につばを吐くんだぜ」

マイケル・ダグラスに同情もするけど、本人も中々ヤバくて笑える。俺的には気持ちいいけど色々と考えてしまう映画。大袈裟かもしれないけど似たような事件って現実で何度も起きてるし、かといって笑えるし。最後はちょっとバトルロワイヤル味があったな〜。

離婚、乗用車需要の低迷、ヒスパニック系のギャング、マニュアル至上主義の飲食チェーン、人種差別問題、インフラ工事の不十分な予算、冷戦後の軍需産業の縮小、などの80年代以降の様々な問題を一気に取り扱った衝撃作。そして1人の男がブチギレる…!

愛する娘の元へ向かう道中、渋滞に巻き込まれてしまい、車を捨てて歩いて向かうことにした。しかしその道中で様々なストレスに苛まれ、暴走してしまう。その過程で、どんどん武器をゲットしていくのだが、展開が進むにつれてバット→ナイフ→銃→バズーカとグレードアップしていくのが面白かった。

「フォー!」
「ファイヴ!やめろ わたしをゴルフボールで殺す気か?広い土地を独占しておいて人をボールで殺すのか?」

主人公のD・フェンス。我慢の限界がきて、いよいよ歯止めが効かなくなってしまった短気な男。とある事情から社会に対しての不満や疑問が肥大化し、全ての感情が爆発してしまう。確かに、自分もこういうの嫌だな〜とかあるよな〜って何度も共感したし、現実で起きても絶対にできないであろうフェンスの仕返しに痛烈な気持ちを抱いてしまい、何度も気持ちよくなったが、観る人によって感じ方が変わる映画だと思う。人によっては笑えるし、爽快感を感じるし、不快に感じるし、社会に対して疑問を抱くだろう李牧はクソ野郎共に次々と制裁を加えていくフェンスの姿に超カタルシスを感じましたね〜。

「うそでいっぱいの汚い世の中だがお前の行動は正当化できん」

そしてもう1人の主人公、フェンスを追う退職が目前の老人警察官の存在。彼も彼で中々酷い仕打ちを職場や更年期の嫁から受けている。ストレスも半端ないだろう。フェンスと彼は表裏一体の関係だ。ストレスに苛まれ、居場所がない。しかし、本当に家族を大切にしていたか、愛していたか、想っていたか。この対比構造から2つの視点が描かれ、最後には対峙するという秀逸さ。

正直、ストレスを感じても許容範囲は人それぞれ。怒りが爆発するトリガーも人によって違う。だから、誰がいつフェンスのようになってもおかしくないのだ。他人事ではない。犯罪に手出しするメカニズムも、社会に蔓延した病的なストレスから起きるものがほとんどだと思う。下手したら、自分自身がストレスの、犯罪のトリガーになっているかもしれない。そう考えると簡単に解決する話でもフィクションでもなく、身近な話なのかもしれません。
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