1980年代、イタリアのナポリで自分の作ったミックステープの販売を始めたDJ志望のエンリコと2人の兄たちは、驚くほどの成功を収めるが、やがて警察の目につけられてしまう。それでもこだわりの音楽が詰まったミックステープを制作し続ける。
まずミックステープを作るのに、たくさんの録音機材があることに驚きました。今ではスマホ1台で何とかなるので、時代の変化が凄まじいと感じました。カセットテープというのが古いですが、サブスクでは味わえない刺激があるように見えます。

'80年代後半にレコードの音源をDJミックス形式でカセットテープに録音して荒稼ぎした男とその兄弟の、実話を基にした作品。

実は僕も、この映画のすぐ後の時代辺りに、DJとして、レコード店員として、同じような事をしていたので、このビジネスが世界規模である事は知っている。イタリアは音楽の流行がヨーロッパで最も雑食的なので、元々コンピレーション・アルバムが大量にリリースされていた状況もあって、本作で描かれているように、DJによる選曲を収録したテープが、社会問題になるレベルで評判になったのだろう。

冒頭は主人公の子供時代で、音楽も当時に合わせてジャクソン5。以降も、彼の成長に合わせて、挿入される曲が変わっていく。'80年代と言っても舞台がヨーロッパなので、日本でヒットしてた当時の洋楽とは微妙に違って、「シング・ストリート」の選曲に近い。

有名ミュージシャンではなく、オタクな青年が得意の音楽で夢をかなえていく話になっているのが良い。音楽は一部の有名ミュージシャンの力だけで広まるのではなく、テレビやラジオ、そして本作のように、時には法律的にグレーな物、あるいは違法な物も含めながら広まっていくものなのだと思う（法との関係は後から考える、あるいは法整備を求めるというやり方もある）。

タイトルが原題通りなのも頑張ってて嬉しい。日本の音楽文化とは少し違う、海外の市民文化を知る事が出来る、正にNetflixオリジナルならではの作品だ。

趣味のミックステープが一大産業に膨れ上がり国内を揺るがす事件となる実話コメディ。

文無しから始めて評判が評判を呼び飛ぶようにテープが売れて国内No. 1の売り上げにのし上がるサクセスストーリーが観ていて胸がすく。

面白いのは警察とのイタチごっこ。
追い詰める警察は音楽祭の音源横流ししているスパイを暴こうと躍起になるが･･･（笑）

80年代のイタリアは著作権・知的所有権保護の規制が緩かったのか海賊盤が正規盤を凌ぐ売り上げになるまで放ったらかしというのが当時の日本と比較しても考えられないほど遅れている。

そう言えば80年代後半に東京のレンタルレコード店にイタリア産ユーロビート・コンピレーション輸入ＣＤが並んでいたのを思い出した、あれもこれの一つだったのかも。

どれだけ金持ちになってもエンリコはDJ、相手が好む音楽をミックスしてテープを作るのが好きなんだな、その気持ちがよく分かるからこのストーリーに引き込まれた。
最後のオチもよく出来ていて笑える。

シドニー・シビリア監督作は「ローズ島共和国〜小さな島の大波乱」も観たが、法の隙間を縫って既成概念の根底を打ち崩す発想を好む人なのかも。
「ローズ島〜」も「ミックスド〜」も根幹は同じ。

面白かった。


監督　シドニー・シビリア

キャスト
ルイジ・ドリアーノ
ジュゼッペ・アリーナ
エマヌエーレ・パルンボ
フランチェスコ・ディ・レーヴァ
クリスティアーナ・デランナ
アドリアーノ・パンタレオ
クリア・セロット
グレタ・エスポシート
ファブリツィオ・ジフーニ