こなつ

プリシラのこなつのレビュー・感想・評価

プリシラ(2023年製作の映画)
3.8
エルヴィス・プレスリーの元妻プリシラ・プレスリーが1985年に出版した回想録「私のエルヴィス」をもとに、彼女とエルヴィスの運命的な出会い、結婚、出産、そして別れを描いている作品。監督は、ソフィア・コッポラ。プリシラをケイリー・スピーニー、エルヴィスをジェイコブ・エロルディがそれぞれ演じている。

世界的スターと恋に落ちた少女の波乱の日々を女性の視点で描いているので、エルヴィスのパフォーマンスはほとんど出てこない。現在78歳の元妻のプリシラは、エルヴィスと別れてから実業家として成功している。エルヴィスの莫大な財産を引き継いだ娘リサが昨年54歳の若さで亡くなってその遺産を巡り裁判沙汰になっているというニュースも新しい。相変わらず話題性に富んでいるエルヴィスとプリシラには一体どんな出会いがあったのか、とても興味があって鑑賞した。

既に大スターになっていたエルヴィス・プレスリーが徴兵制度で西ドイツの陸軍基地に配属されていた時、軍人の父親が勤務していたプリシラとパーティで出会う。エルヴィス24歳、プリシラはまだ14歳だった。やがて親の反対を押し切ってエルヴィスと暮らし始めたプリシラにとって、大スターと生きることはエルヴィスの色に染まっていくのだということを身に染みて感じていく。一緒に暮らしてから6年後、2人は晴れて結婚し、娘リサが生まれる。

驚いたことに、映画の中のプリシラ、ケイリー・スピーニーは実際の若い時のプリシラの写真とそっくり。髪型やファッションだけでなく、雰囲気そのものが似ている。ケイリー・スピーニーは、この作品でヴェネチア国際映画祭の主演女優賞を受賞している。世間知らずの14歳のプリシラを自分の思うように色付けて行くことは、エルヴィスにとって難しいことではなかったと思うが、既に麻薬に溺れ、女性関係も派手な上、何かと取り巻きがうるさいエルヴィスに、次第に愛想を尽かして彼の元からこうやって飛び立って行ったのかとあらためて知った。娘リサが4歳の時にプリシラと別れ、9歳の時に47歳の若さで亡くなったエルヴィス。「キング・オブ・ロックンロール」と騒がれ続けた彼にとっては、プリシラとリサと過ごした日々が貴重な安らぎであったのではないかと思わせる伝説的なカップルのストーリーだった。

音楽担当のポップバンド・フェニックスのボーカルであるトーマス・マーズは、コッポラ監督の旦那様。さすが息のあったコンビネーションで登場した劇中の30曲以上の懐かしい楽曲は、ひとつひとつのシーンを盛り上げ、心に残る素晴らしいものだった。
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