ナンデヤネン

コンクリート・ユートピアのナンデヤネンのレビュー・感想・評価

コンクリート・ユートピア(2021年製作の映画)
4.1
独裁国家の有り様を皇宮アパートに凝縮させたのが本作品と解釈した。住民たちが連呼する「キム・ヨンタク万歳!」の台詞に総毛立ってしまった。その台詞を浴びて気弱なヨンタクの表情がみるみるうちに自信に満ちた表情に変わっていく。これが独裁者が生まれる瞬間なんだなと。瞬間芸ともいえるイ・ビョンホンの芝居の上手さよ。そこからはどこぞの国の独裁者を想起させる立ち居振る舞いである。
困っているもの同士、助け合っていればこんな結末にはならなかっただろう。クライマックスで人間同士殺し合う光景はまさに世紀末。人間の醜態をまざまざと見せられた。振り返ってもし自分があのアパートの住民ならどうしていたか?正直に言ってミョンファのように聖人君子でいられる自信はない。権力者の庇護を受けている限りは住まいや生活物資を受けられるのだから。多少なりとも利己的になるのではないか。でもどうなんだろう。権力者に目の前の人間を殺せと言われたら、そこでようやく自分は良心に立ち返るだろう。人間の一人として、最後まで良心は持っていたいものだ。
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