Crispy

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章のCrispyのネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

Vol.2-15

大学生の頃、追いかけていたコミックスを途中で買わなくなり、完結を知って読もう読もうと思っているうちに映画になってしまった。時が経つのが恐ろしく早い…。


3年前、未曾有の大災害を巻き起こした侵略者の母艦が浮かぶ東京。
異常さに慣れきって危機感がなくなった人々が大多数である世の中の描写が抜群だと思う。

あくまで、命を脅かす「かもしれない」ものが空に居座り続けているだけ。
そんな、現実とさして変わらない門出とおんたんの日常を丁寧に描く。
偉い人たちは日々頭を悩ませて議論を交わしているけれど、自分たちの生活は何も変わらない。人類の危機なんかより、ちょっと先の将来の方がはるかに大事で心配。

そんな中、門出たちは、とある事故をきっかけにして初めて自分たちの世界と侵略者が居座っている事実が地続きであると強烈に自覚する。
それでも世の中は何事もなく回っていくし、どんなに悲しいことがあっても、楽しいことは楽しいし嬉しいことは嬉しい。
その人間の強さが、残酷で切ない。


門出とおんたんの「絶対」な関係性。
その人さえいてくれれば、笑顔であればそれで良くて、日なたのような優しい場所を守れるなら何でもすると思える関係性は、尊くて危うい。
その感情に身を委ねた結果の最悪の結末にぞっとする。
でも、その関係の尊さは自分が思う「幸せ」に最も近いものだとも思う。
幸せなんてひどく相対的なものだから、自分の持っていない「より良いもの」を求め始めると簡単に壊れてしまうのだな…。自分を含めて、人類はなんて愚かなのだろう。

人類終了まであと半年。
後章を楽しみに待ちたい。
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