Crispy

ナイト・オン・ザ・プラネットのCrispyのレビュー・感想・評価

4.9
Vol.2-11

同じ夜、地球上の違う場所でのタクシーの車内を描くオムニバス作品。こういう作品、大好物である。

全編、魅力に溢れている。
ロサンゼルスはどのシーンも額に入れて飾りたくなるほど格好良いし、ニューヨークはハッピーで楽しい。
パリの盲目の女性は誰よりも魅力的でラストは皮肉が効いていて秀逸だし、ローマの下らなさには声を出して笑ってしまった。

そして、ラストのヘルシンキ。
ひとの数だけ人生がある。話さないだけで、辛い過去の一つや二つ誰にだってある。きっと、この同じ夜に違う場所でタクシーに乗っていたドライバーや乗客たちにも。

劇的なことなんて、簡単には起こらない。
退職金からきっちり運賃を取られた乗客は、雪の積もった路地に座り込む。夜は明け、何事もなかったかのように朝はやって来る。
冬の朝の澄んだ空気の肌寒さに、夢から醒めていくような余韻が心地よい作品だった。
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