noelle

青春のnoelleのレビュー・感想・評価

青春(2023年製作の映画)
5.0
素晴らしかった。これまで見たワンビン作品で一番エモーショナルだった。鉄西区の第二部もティーンエイジャーたちの話だったけど、多分あの時はまだ外から見てる感じの方が強かった。いつもワンビンの映画は親密だけど、今回格別心理的な距離がグッと縮まったように感じて驚いた。
苦い銭と同じくポップソングとミシンの音が重なる縫製工場。そこで出会う青年たち。ふざけながら高速のミシン捌き、逞しく賃金交渉、男の子はキザで女の子がみんな気が強くて良い。耳つねりごっこからの作業場抜け出して光の中2人の背中を追うベストショットに瞬間で泣いてしまった。布団干してるアパートの踊り場のデートも瑞々しすぎた。やあねずっと撮られてると言われるところでああカメラあるんだよなと思い出す透明カメラ。
こう書いてるとほんとに普通の青春映画で実際そうだったのだけど、あのお湯の入ったボトルや男女一緒の生活スペースを思うとやっぱり笑っていいのか分からなくもなる。今眺めているのはもう動かしようのないほどに根を張ってしまった資本主義のピラミッドの隅の隅の風景だと。いろいろそこから思いが巡ったけど映画の間は一旦彼女彼らの生命力を浴びることにした。時の止まった世界のようにも映るけど、今もあの場に行けば同じ様に彼らは生きているのか。普通に生きていては決して出会うはずのないカメラの向こうの彼らともう他人ではなくなった様な感覚。またもワンビンのカメラに助けられて、私とスクリーンに映る彼らとは生まれ落ちた場所が違うだけなのだと思い直した。
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