アーモンドフィッシュ

羊たちの沈黙のアーモンドフィッシュのレビュー・感想・評価

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)
4.8
今まで『羊たちの沈黙』のレビューを書いてなかったのが不思議。改めて観ると、やっぱり素晴らしい映画ですね。オスカーを取る映画って、「狙ってます!」って感じの映画と、全然そんなつもりじゃなく取っちゃう映画の二種類があるみたいです。『ラ・ラ・ランド』は前者で、『羊たちの沈黙』は後者。ホラー映画で連続殺人鬼の話なんて、普通はオスカーにノミネートされると思わないですよね。でも、蓋を開けてみればアカデミー賞主要5部門を制覇!すごい映画です。

物語は、FBI訓練生のクラリス・スターリングが、新たな連続殺人事件「バッファロー・ビル」の捜査に協力するため、収監されている天才精神科医ハンニバル・レクターに面会して事件を解決するという話。バッファロー・ビルよりもレクター博士の方が圧倒的に存在感があって、バッファロー・ビルが影に隠れてしまった感がありますね。ハンニバル・レクター博士は、映画史上最も象徴的な悪役の一人として広く認知されています。彼の冷酷さ、知性、カリスマ性はサイコパスの典型として描かれていて、その後の作品におけるサイコパスキャラクターのステレオタイプを作り上げました。アンソニー・ホプキンスの演技は、レクターの魅力と恐怖を見事に表現していて、多くの観客に強烈な印象を与えました。

映画を観ていて思ったのは、ジョディ・フォスターがすごく小さく見えること。公式では160センチで、私より2センチは高いはずなのに、他の女性と比べても小さく見えます。私ってこれよりさらに小さいのかと気分が落ちましたが、どうやらこれは監督の狙いらしいです。男社会の中で頑張る女性を際立たせるために小柄なジョディ・フォスターを配役し、あえて周りには背の高い俳優や女優をキャスティングしたんだとか。それを聞いて少し安心しました(笑)どうやってペンを盗んだのか、なぜオルゴールの中に写真があると分かったのか…などなど謎解きとしてはいまいち説明が足りなかったのが唯一の残念ポイントと言えるかもしれません。

クラリスは、FBIの上司や同僚からしばしば軽んじられたり、性的な目で見られたりします。例えば、彼女がレクターに面会するために刑務所を訪れるシーンでは、男性の看守たちからの好奇の目線を浴びます。また、上司のクロフォードが彼女をバッファロー・ビル事件の捜査に送り込む際の動機に疑問を感じるシーンもあります。クラリスは自分が能力ではなく性別によって選ばれたのではないかと感じます。レクター博士やバッファロー・ビル以外にも、クラリスは男性社会との戦いにも挑んでいるのです。

ただのホラー映画やサイコスリラーではなく、深い人間ドラマが詰まった作品です。何度観ても新たな発見があり、心に残る映画です。まだ観たことがない人にはぜひおすすめしたいですね。