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実に面白い。
大人のコメディである。
以下ネタバレ
申し訳ない。
オチまで書いてしまいました。
未見の方はここで読むのを止め
てね。
冒頭は子どものケンカの場面だ。
一人の少年が別の少年を棒で殴ってしまうところから始まる。
殴られた少年は大ケガを負ってしまう。
場面は変わって、4人の男女がとある一室で話し合いをしている。
冒頭の2人の少年の親たちだ。
殴った方の少年の両親、アランとナンシー。
殴られた方の少年の両親、マイケルとペネロペ。
和解のための集まりらしい。
両者の雰囲気は穏やかでにこやかだ。
冷静に話し合っている。
だが、どこか様子がおかしい。
被害者側のマイケルとペネロペが異様に寛容過ぎるし、話を合わせながらもアランとナンシーは居心地が悪そうだ。
表面的なやり取りがどこか不自然でわざとらしい。
以降は4人の会話劇だ。
徐々にそれぞれの内面や本音が露わになってくる。
穏やかに事を収めたいペネロペだが、言葉の端々につい棘が出てしまう。
息子が大ケガを負ったのだ。
仕方ないと言えるだろう。
だが、加害者側のアランは携帯電話で仕事の話ばかりしていて、全員をイラつかせる。
殊勝な態度は最初だけで、あとはずっとシニカルで冷淡だ。
マイケルがハムスターを捨てた事をなぜか執拗に責めるナンシー。
そんなナンシーは気疲れで体調を崩し、その場で盛大にゲロをぶちまけてしまう。
・・・実に悲劇的な大惨事である。
本作における私のベストシーンだと言えよう。
あとは本音と本音のぶつかり合いだ。
両家の言い争いから夫婦間のそれへ、更に男対女へと・・罵る相手がコロコロ変わっていく。
あとはもうグチャグチャだ。
人格攻撃や子どもたちの悪口など、何でもありである。
実に醜い。
彼らの関係はもはや修復不可能であろう。
一方その頃、問題の2人の少年は何事もなかったかのように仲よく遊んでいたそうな。
めでたし、めでたし。
そんなもんだ、子どものケンカなんて。
私も確かに友だちとケンカをしたはずなのだが、ほとんど覚えていない。
次の日には普通に遊んでいたものだ。
中1の時、同級生とつかみ合いのケンカをした事があるが、その日の昼休みには普通にしゃべっていた。
私が転校する時、一番寂しがってくれたのが彼だった。
今さらながらだが、ありがとう。
君の事は一生忘れない。
・・・え~と、何君やったっけ?
岡本・・岡村・・西村・・綾小路・・・
とにかく、ありがとう!
君の事は一生忘れない!
“子どものケンカに親が出てくるな”というのは、こういう事が関係しているのだろう。
子どもは子ども同士で上手くやっているのだ。
さて、大人の方のケンカである。
こちらの実体験はとても生々しいので、映画の話だけに留めておく方が賢明だろう。
4人の俳優の演技合戦だ。
最初の取り繕った様子から徐々に本性が露わになっていく過程が素晴らしい。
それぞれ基本の性格がまずあって、その振り幅の中で勝負しているというか。
いきなり別人格に豹変するようなサイコパスな展開はないのだ。
そこが非常にいい。
監督はロマン・ポランスキーである。
かなり面白いので是非ともご鑑賞いただきたい。