シャチ状球体

月光の夏のシャチ状球体のレビュー・感想・評価

月光の夏(1993年製作の映画)
3.4
結構薄味な反戦映画。

実際に特攻前に鳥栖の小学校にピアノを弾きに行った兵士のお話で、それ自体は特に問題はないんだけど、平和な(制作当時の)現代と比べて昔は……みたいなある種のノスタルジーが根底にあるので映画全体のプロットに実在感がない。

戦争なんて遠い昔のことで平和な日本には関係ないこと、という共通理解が2023年の今社会に残っているかということを考えると、この映画で描かれる現代自体が過去のものになってしまったのだろう。

特に回想シーンにおける顕著な過剰演出が戦争の本質を覆い隠してしまっているのも微妙な点。死を強制される状況に追い込まれた若者がこんなに元気で血色が良いのは不自然だし、何故そんな状況が作られてしまったのかという視点も欠けている。
中庸を心掛けた結果何のメッセージも残らなかったかのよう。

特攻隊員の手紙や写真が紹介されるシーンは旧日本軍の愚かさをきちんと伝えられていたので、いっそ現代の元隊員を捜すドラマ部分は全カットしても良かったかも。
シャチ状球体

シャチ状球体